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「なんだそれ・・・。」
いまいち納得していないような渋い顔の陽に、にこりと笑いかける。
「聞いたとは思うけど、ここには同性愛者の方が多いからね。」
高校時代の青春を彩る、大切な恋愛イベントなんだろうよ。
そう続けると、陽の動きがぴたりと止まった。
あらら、どういう反応だろうか。
王道編入生だし、理事長から既に聞いたはずなのだけれど。
まだこの学園の素晴らしき現状を把握していないのかな。
立派に目立つ親衛隊もあるし、カップルで行動してる姿もよく見かけるんだけどな。
「あ、あのさ・・・。」
まだぎこちないままの陽が、伺うように顔を見てくる。
首をかしげて、やんわりと先を促せば、真っ直ぐに俺を見て口を開いた。
「そ、の・・・!京もさ、ゲイとかバイ、なのか・・・?」
必死に俺を見てくる彼は、さてどんな答えをご所望なのだろうか。
もし仮に俺が同性愛者だったとして、彼はどんな反応だろうか。
軽蔑、寛容、警戒、同情、納得、上辺の理解・・・。
ぐるぐると巡るどうでもいい思考を打ち切って、ありのままを答えることにした。
「さぁね。俺は恋なんてしたこともないから分からないよ。・・・偏見は、ないけれど。」
偏見が無いどころか、わくわくしながら享受する腐男子だけれど。
「へ、へぇ・・・。そっか。」
しっかし陽ってば、声が大きいんだから。
廊下に居合わせた人達が聞き耳を立てていたじゃあないか。
何に興味があったのかは知らないけれどね。
それにしても、と再びゆっくり歩き始めながら横を見る。
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