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迷いなどない委員長は、うろたえる俺を置いてさっさと腰掛ける。
仮眠室とはいっても、この金持ち学園のことだから広い。
大きなベットとふかふかの三人掛けソファー、それにあわせた机がある。
しかし、さすがにソファーはひとつしかないんだよね。
そして、それには委員長が腰掛けたわけだ。
ちなみに、ベットには背を向けて置いてある。
・・・俺は、どこに座ればよいのやら。
相変わらず無表情の委員長との沈黙が心地悪かった俺は、とうとう口を開いた。
「どういう、つもりですか。」
微笑みのオプションなんてない。
そんなことしたって、きっとこの人は何も感じないだろうしね。
「話すだけだ。いいから座れ。」
命令口調で淡々と言われる。
まあ、俺だけが立っているのも落ち着かないし、奇妙ではあるもの。
それは俺も分かってるんだけど、だから、どこに座れって言うの。
答えあぐねていると、彼はくつり、と笑った。
目を少し細め、口元を歪めただけで、笑い声なんて立てていない。
悪の親玉みたいな、不敵で傲慢にも見える笑みだ。
だけど、なんかやたらとフェロモン満載で、鬼畜な雰囲気で、とにかくかっこいい。
おっと、思わぬ不意打ちだ。
「隣しかないだろう。」
馬鹿か、とでも後に付きそうな口調だ。
だけど、俺を卑下する色はなく、むしろ食堂での陽への態度から見るに、妙に柔らかい気もする。
「・・・ですよね。」
なんだか、思っていたよりいい人じゃないか。
いや、食えない人物だとは思うけれど。
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