∴2
心の中で毒づいて、だけれど顔には微笑を浮かべて愁傷に頷く。
ああ、口の端に食べていたクッキーの欠片がついているよ。
素晴らしい。狙っているのかな、彼は。
どちらにせよ、俺に顔を向けられてもどうしようもないけれどね。
むしろ、ぼさぼさのカツラと相まって、不潔なようにしか見えない。
嗚呼。苛立つ心のせいで陽に八つ当たりしはじめてしまった。
「・・・なるほどな。」
無表情のまま言い、委員長はバサッと書類を机上に放る。
何をするのか、と不思議に思い観察していると、立ち上がった彼はこちらへ一歩踏み出す。
「退室の許可はしない。」
さっぱりと言った委員長は、怪訝な顔をする俺の腕をひく。
そのまま自らの決して緩まないペースで、廊下への扉とは逆に歩き出す。
「な、なにしてんだよっ!」
焦ったような、怒っているような声で陽が怒鳴るも、委員長の歩みは緩まない。
双子はといえば、こちらも驚いたような顔を仲良く見合わせていた。
ああ、もしかして。
「仮眠室・・・。」
ぽつりと呟けば、正解だとでも言うように、ちらりとこちらを振り向いた。
奥の扉を開けて俺を入れ込むと、委員長は部屋のみなを振り返る。
「好きにしてろ。」
威厳あふれる冷たい命令に誰かが返事をする間もなく、こちらへと入って鍵をしめる。
この人は、人の上に立つ以外には生きれないんじゃないか。
あまりにも強い威圧感と迷いのない命令に、俺たちは、ただただ流されてしまった。
[prev] | [next]
back