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振り向いた委員長に、拳を強く握った陽は語りかける。
「人をそんなに拒絶して、勝手に1人になって、寂しいだろ!? 確かに信じるのは怖いかもしれないけどさ、俺を信じてくれよ。」
最後のほうは柔らかく、むしろ宥めるようだった。
漆黒の髪がわずかに顔にかかる委員長は、じっと静かに陽を見つめている。
ああ、この人は落ちちゃったのかな。
こんな、わけのわからない言葉と光に。
でもそれが王道だし、仕方ないよね。
確かに嬉しいはずなのに、感じたのは少しの失望と諦観。
王道の総受けの攻メンバーが揃うんだから、喜ばしいはずなのに。
そっと目をふせる。
こうやって静かに感情を殺していれば、俺は中心になんてならない。
あくまで傍観、自分の感情は無視、ただの安全地帯にいればいい。
「・・・そうか。」
何の感情の色も見えない、委員長の低い声が響く。
まばたきひとつで切り替えて、目を上げる。
だって、この大きな場面を見逃すだなんて、腐男子失格だろうからねぇ。
その瞬間、心臓が、止まるかと思った。
委員長がまっすぐに見ていたのは俺で、無表情ながらもその瞳の中には少しの愉悦が含まれていて。
「おまえ以外で足りるから結構だ。」
陽に言い放つと共に、その瞳には嘲笑と卑下と、そして俺への問いかけがあった。
・・・ああ、なんだかなあ。
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