嗚呼、素晴らしき | ナノ
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さすがに耳に障ったのか、再び陽を振り返った委員長の顔は、どこか先ほどよりうんと冷たい。
いやはや、ここまで無表情に他人を拒絶できるとは。

そして、どこまで鈍感なのか、それにも気づかない陽。
いや、真っ直ぐで良いけどね。

「っ、なんだよ、答えろって!」

「・・・言わせて貰うが、」

なおも強気に噛み付く陽に、委員長が静かに口を開く。
真っ直ぐに、まるで射抜くように陽を見据える視線は、強く凍るように冷たい。


「礼儀もなってない他人ごときに、答える義理はない。」

どこまでも無関心で冷たい彼は、きっぱりとそう拒絶した。
その空気は張り詰めていて、陽と見つめ合っている状況でも、萌えだなんて言ってられない。
やっぱりこの風紀委員長を攻略するのは難しいねぇ。


「・・・っ!き、京!」

いきなり自分の名を大きく呼ばれ、首を傾げる。
その声は、どこか揺れていて、切羽詰った、救いを求めるものだった。
良くは見えないその表情も、なんだか、泣きそうに歪められているような気がする。

だけど、俺に救いを求められてもねぇ。
そこをどうにかしちゃうのが王道編入生でしょうが。

「なあに?」

頬杖を付いて首をかしげたままの俺は、にこりと笑ってみせる。
その仕草で、周りの空気がやや弛緩した。


「こいつがさ・・・!」

びしっと委員長を指差し、状況を説明しようとするけれど・・・。

うん、残念ながら、俺も今まで見ていたからねぇ。
状況説明なんて必要ないんだよねぇ。
そして、自分を指す陽の指を忌々しげにみる委員長の恐ろしいこと。

しかも、食堂中の視線は俺と陽と委員長に集まっている。
あらまあ。

俺は当事者になんてなりたくはないのにねぇ。
陽って、なんでこんなにも人を巻き込むのが上手なんだろうか。




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