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存在感抜群の風紀委員長の彼が歩いてくる。
ゆったりとしているが、のんびりとしているわけではない足取り。
真っ直ぐに見据えられた瞳は、鋭くこちらのテーブルを捉えている。
その覇気に、周りはきっと飲まれて、言葉を発せなくなったのだろう。
「俺の言った仕事はしたのか。」
どこまでも冷たい声だが、別段咎める色はない。
きっと彼は、ただ単に彼の事実を言っているだけだ。
「・・・っ、なんだよお前!翔たちが嫌がってんじゃねぇか!」
不自然な沈黙の中で、大きな声をあげる陽。
風紀委員長はやはりかっこいいねぇ、としか思っていなかった俺は、そりゃもう驚いた。
いやはや、流石だよね。
だって、こんな沈黙の中で、しかも天下の風紀委員長相手に怒鳴るなんて。
やっぱり陽は特別だと思う。
「それは、本人がそう口にしたのか。」
ふっと陽を見据えて、風紀委員長は呟く。
無機質なその表情と声に、思わず身構えてしまうのも分かる。
「っ、いちいち口にしなくても俺は分かるんだよ!」
眉をしかめて不機嫌を露にする陽に、食堂が静かにざわめく。
非難の呟きだろうが、風紀委員長の効果か、小さな呟きに留まっている。
「そうか。」
あっさりと何も言い返さず流した委員長に、陽は肩透かしを食らったようだ。
俺も驚きだけれど、委員長は無駄を嫌う合理主義なのかねぇ。
話は終わったというように双子に向き直った委員長。
対する双子は、苦笑いで誤魔化そうとしている。
「・・・おいっ!おまえ、誰だよ。偉そうにすんな!」
そういう君はどうなんだろう、と思うのは俺だけじゃないはずだ。
そして、自己紹介は聞いていなかったのか、と呆れているのも俺だけじゃないはずだ。
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