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さすがに少しばかり気になって、周りには聞こえないくらいの声量で尋ねてみる。
「この食堂、うるさいと思わない?」
さきほど彼が俺たちに大声をあげた際にも、悲鳴があがった。
陽に対する非難の声は、変わらず大きい。
わざと本人に聞こえるようにと声を張り上げる奴もいるが、やはり集団が呟くと馬鹿にならないのだのだろうね。
なんだかんだで吾妻双子も大河も、美形なものだから。
・・・なぜか俺を好きだとか綺麗だとかなんやかんや言ってくる輩もいるがねぇ。
神経と美的感覚を疑うよねぇ。
ちなみに、平凡な真澄には負の感情は向かわない。
俺が情報操作して、真澄は俺の心優しい親友かつ平和な同室者であるとしておいたからねぇ。
学園では無害だと認知されている。
「ん―、うるせぇけどさ―・・・、みんな楽しく食ってるんだから良いじゃん!」
爽やかに笑う陽に、ああ彼には周りの声なんて聞こえないんだった、としみじみと思った。
諦観を抱きながら、真澄に目配せすると、急に違和を感じた。
食堂が、静かすぎる。
まるで波が伝わるように、しんとした食堂。
人気者が来て騒ぐのは日常茶飯事だが、静まるとは珍しい。
異常事態に、すばやく目を走らせれば、顔を見合わせている双子がいた。
「どうしたんでしょうね。」
質問よりは強く、分かっている2人に言えば、そろって苦笑いをされた。
「俺らさぁ―、実はおつかいできてるんだった。」
てへっと星が付きそうな二重奏が終わるや否や、静かに重い声が響いた。
「何をしている、吾妻。」
ああ、とうとう来たか。
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