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にこりと笑って先を促す。
沈黙は肯定なり。
「なんであんな奴と一緒にいるの?」
心底理解できないのだろう、彼は苦々しく呟いた。
だって、王道編入生だもの。
いくら騒々しく、平穏を壊す人でも、彼は王道編入生。
俺は王道の総受けが見たいし、それでなくても腐男子なら一度はリサーチするだろうよ。
とはいえ、腐男子でもない彼には分からないだろうし、俺もカミングアウトする気なんてないからねぇ。
「どうしてでしょうねぇ。」
「・・・ちょっと、少しは真面目に答えなよ。」
答えようが無くて、へらりと笑って逃げると、彼は少し口を尖らせた。
計算なんてしてないだろうけど、美形なチャラ男がこの動作とは、可愛らしくて萌えるじゃないか。
・・・鼻血が出にくい体質の俺で良かった。
じゃなきゃ、突発的な萌えに対応できないものねぇ。
「何してんの―?」
俺が笑って誤魔化し、渉が不機嫌になりつつあると、隣から声が割って入った。
流石に気づいたか、と驚きもせずに翔を見る。
いつもとほぼ同じように見えるとけれど、少し瞳に剣呑なものが光っていた。
やはり、お互いに依存度は高いみたいだねぇ。
「少しお話してただけですよ。」
にこりと軽く笑めば、相手は全く納得していないながらも、ふぅんと頷いた。
やはりこんな場所で事を荒げたりするほど馬鹿ではないらしい。
「え、そこ何の話してたの!?」
・・・ほら、こんなふうに聞いてくる子もいるものね。
こそこそ話すなよ、水臭いぞ―!と口を尖らせる陽に適当に相槌をうっておく。
最近、この子の扱いに慣れてきたよ。
・・・それにしてもねぇ。
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