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「呼ばれてないけど―」
「飛びでもしないけど―」
「じゃじゃじゃじゃあ―ん。」
へらへらと軽い口調に、きれいな二重奏。
周りの騒音にも、人ごみにも、まったく霞まない2人が登場した。
食堂の光にきらめく、金と銀の髪が眩しい。
「あっ、翔と渉じゃん!」
陽が嬉しそうな声をあげて手招きする。
この前の一件以来、陽は彼らと友達になったらしい。
まぁ、陽にかかれば、少しでも話したら友達か親友かもしれないけどね。
「久しぶり―。」
「千島クンもね―。」
軽く会釈すれば、2人は微笑んでくれた。
俺から見れば、双子はただ、陽に対しての静かな警戒を深めただけだと思うな。
「さっきはお疲れ!あ、そこ座れよ!飯は食った?」
矢継ぎ早で忙しい陽の言葉を、軽く受け流しつつ、双子は同時にこてんと首を傾げる。
「まだ食べてないよ―。」
「忙しかったもんね―。」
ね―、と仲良く顔を合わせて頷く2人。
本当に仲良しさんだよねぇ、これはちょっと俺の妄想が行き過ぎても仕方ないよねぇ、リバカップルだよねぇ。
「よしっ、じゃあ一緒に食べようぜ!」
陽がとびきりの笑顔でそう言う。
ちなみに、顔の上半分はぼさぼさのカツラで隠れているから、よくは見えないけれどね。
陽の言葉に、真澄は密かに眉をひそめて、双子はほんの一瞬だけ息をつまらせた。
大河は、我関せずといったふうに明後日の方を向いている。
本当に、陽は鋭いんだか鈍いんだか分からないな。
はぁ、と溜息が出そうになる。
幸せを逃すのは嫌だから、実行はしなかったけれどね。
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