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人間は、突き詰めれば、誰しもひとりぼっち。
たったひとりの自分だもの。
孤独はみんなのものでしょう?
ああ、悲しいのかな。
こんなことを考える俺も、あの風紀委員長と同じく、陽から見れば悲しいのかな。
俺はあの冷たい目を見ても、彼のことを理解できないけど。
かわいそう、なのかな。
「…ねぇ、陽。」
ぽつりと、思わず口を飛び出した言葉。
平然とした顔で振り向いた陽は、ぐるぐると回る俺の心なんて知らない。
だって、他人だものね。
「どうしたんだ?」
にこっと屈託無く笑いかけてくれる人に、耐えきれず問いかけた。
「憐憫は、愛なのかな。」
きょとんとした陽は、少しうなってから苦く笑った。
「よく分かんないけど、ちょっと違うんじゃねぇかな。急にどうしたんだ?」
何でもないよ、と首を振れば、あっさり納得してまたステージに視線を移す。
すがるような心の中の隠れた俺に、鋭い痛みが走った。
かわいそうに、は愛じゃないのか。
なんだ、陽のあれはただの憐憫。
下のものに対するあわれみなのか。
いらないのにな、そんなの。
そんな温いものじゃ、だめなのにな。
ふぅ、と小さく息を吐く。
心の痛みは無視して、陽のように顔をあげる。
大丈夫、大丈夫だ。
俺の周りには現実から逃避させてくれる、素敵な萌えがあるんだから。
きっと、まだ、だいじょうぶ。
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