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その尋常でない威圧感に、一気に会場が静まり返る。
遠く離れているこの席からでも、彼が何の感情も込めずに凛と立っているのが分かる。
東條会長がカリスマ性のある王者だとしたら、この人は圧倒的な強さで周りを従える皇帝だ。
その強さを崇め、冷酷さに飲まれ、畏怖を抱き、美しさに魅入られる。
「風紀委員長を務めさせていただく、2S鬼城司(キジョウ ツカサ)だ。」
どこまでも澄んで、だが熱を感じられない声。
短く告げるとすぐに、隣のへらへらした双子にマイクを手渡す。
そんな彼の表情は、ステージ上に上がってからずっと、ぴくりともしない。
孤高の風紀委員長、かなりの難関だろうねぇ。
きっと鬼畜なのかもしれないけど、それ以上に心というものが感じられないよ。
精巧な人形のような男前だけれど、命の力強さを感じない。
ただ冷たく、こちらの心臓を掴み止めてしまうような威圧感。
ある意味では、会長の正反対の人物だ。
思わず見入っていた俺は、次に明るく響いた声に我に帰った。
「風紀副委員長を務めま―す。」
「2Sの吾妻翔と吾妻渉で―す。」
会長の凍りついた雰囲気の中で、軽く笑った2人。
こんな時も繕える彼らだって、かなりの強者だよねぇ。
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