∴3
すさまじい轟音がとどろく。
きゃああああ、というチワワちゃんたちの黄色い悲鳴。
うをおおおお、という野太い体育会系な男の歓声。
いかにも対極でありそうな2つだが、上手く調和しているように感じた。
ただ、俺の耳は正常だから、少しばかりうるさすぎるねぇ。
他の人たちは、もう聴覚が慣れてしまっているのかな。
それとも叫んでいたら、周りの音なんて耳に入らないのかな。
大河は不機嫌に舌打ちをし、真澄はうんざりと下を向き、陽は王道に可愛らしく耳をふさいでいる。
王道編入生ってすごいよねぇ。
本人達の前で堂々と耳を塞ぐだなんて、周りの目も周りの世界も、全く気にしない強さがあるよね。
本当に、そういうところでも陽って王道すぎるよ。
編入する前に講座でも受けてきたんだろうか。
とりとめもないことを考えながら、視線を前へと向ける。
ステージの袖から中央へと、生徒会役員が1人ずつ歩いていた。
会長はこちらには目もくれず颯爽と、副会長はにこやかに笑いながら、会計は可愛らしく大きく手を振り、書記は涼やかに、そして。
横から陽と真澄の驚く声と共に、現れたのは生徒会補佐。
整った人形みたいな日本人ばなれした顔、白い肌、落ち着いた茶髪、スタイルの良い長身、柔らかな雰囲気。
間違いなく、神崎理央だった。
[prev] | [next]
back