∴続く道は
「時間の無駄、後悔するだろうよ。」
面白そうにきらめく瞳は強く、そして意外なほど真剣だ。
見透かされるような、入り込んでくるような、不思議な感覚に陥る。
思わず視線をそらして、地面を見つめながら呟いた。
すると、また抑えたような笑い声が会長からもれる。
眉をしかめて顔を上げるが、もう会長の顔はまっすぐに前を向いていた。
「何が可笑しい?」
「張り合いがあって、嬉しいだけだ。」
肩をすくめるその動作に、ため息がこぼれそうになった。
全くこの人は、なんで俺の思惑通りに動いてくれないんだ。
その興味を、どうして陽じゃなく俺に向けるのかねぇ。
盛大なため息がつきたくなる。
幸せが逃げるだなんていうが、それでも吐き出せないとイライラする。
それでも弱みなんて極力見せたくないから、溜息をこらえて上を見上げる。
真っ青な空は高く澄んでいて、あまりに遠い。
「それにさ、」
ぽつりとこぼし、顔だけこちらに向けて、口をにやりと歪めた。
「おまえ、敬語が消えてきてる。」
…本当にめんどくさいな、この人。
勘の良い人間は嫌いじゃないが、目ざとい奴は好きじゃない。
微妙な基準だけれど、なんとなくニュアンスを感じ取っておくれよ。
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