(5)
「…っ、篠原…!」
危機的状況。
篠原の手が頬や腰を滑るたびになんだか背筋がぞくぞくする。
息が、体があつくなりそうになって、力を抜いて相手に任せたくなる。
だけど、ここで負ければ学生時代からの努力が水の泡だ。俺の素敵な腐生活はまだ始まったばかりじゃねぇか。
流されそうな自分を叱咤し、唇をかみしめて篠原の体を押し返した。
「……は、えっろい顔」
少し離れた、それでも近すぎる整った顔がぼそりと呟く。
それはお前だろ、といっそ呆れた。
楽しそうに目を細める姿には、なんとも言えない艶やかさがある。
「…あんま見つめんといてや」
抑えが効かなくなる
小さく続けた篠原の低い声が耳に届いた瞬間、荒々しい音を立てて風紀室の扉が開いた。
「………」
いきなりの乱入者と、お互い予想外の出来事に思わず沈黙して見つめ合う。
気まずい、いや気まずいなんてレベルじゃねぇ。
扉を蹴って開けた生徒会長は、長い足を下ろしながらゆっくりと眉をひそめた。
「…何やってんだ、てめぇら」
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