腐男子先生シリーズ | ナノ
(腐男子先生と風紀委員長)


えぇ―、と不満の声をあげるいい大人に、頬が痙攣しかける。

いつもながら、この変態は恐ろしくしつこい。そしてやたら俺に構ってくる。
止めて欲しい、本当に止めて欲しい。
可愛いチワワちゃんでいいじゃん、俺様ホスト教師でしかも実は腐男子とか笑えねぇよ!
濃すぎるんだよ! 悶える暇がねぇよ!

なんて言おうか迷う俺に、じりじりと迫ってくる変態保険医。
冗談じゃない、誰か助けてください、そう思った時だった。

「何してんのや、変態」

独特のイントネーションで通る声が、すっぱりと空を切り裂いた。


「ちょっと、せっかくイイトコだったのにぃ」

「どこがだ」

唇をとがらせた保険医に反射的に突っ込む。
しかし相手はニヤニヤと笑ったままだった。

「知らんわ、ボケ。保健室帰れ変態」

しっしっと手を払う彼は、しかしながら生徒だ。
…風紀委員長、という立場にはあるけれど。

2年Sクラス、篠原(シノハラ)。
明るい茶髪、かっこいい美形、関西弁、毒舌だけどさっぱりした性格。

良い人だよな。
俺は冷酷風紀委員長が好みだけど、こいつだって悶えれる。
サドっぽいし、独占欲強そうだし!

「はいは―い」

悲しそうに振り返りつつ帰ってゆく保険医に、心の中で安堵の息を吐いた。

ああ、助かった。





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