短編 | ナノ
(2)





悔しかった。
ただ、どうしようもなく。


一目惚れ、だったんだ。
ほんとに綺麗な奴で、すぐに引き込まれた。

編入したての俺に優しくしてくれた同室者。
夕飯にそいつを呼びに来たおまえに、その瞬間惚れ込んだ。


知ってる。
意外とイタズラ好きで、甘党で、大食いで、1日8時間睡眠で、笑顔が可愛くて、適当で、モテて、身長は170pの壁を超えられなかった。

ずっと見てた。
だから、知ってる。

俺が好きなおまえは、俺の同室者が好きなんだろ。


どうしようもなく、悔しい。
もっと早く逢っていれば良かったのに。



ほら、またため息をついた。

視線の先には、校庭でサッカーをするアイツ。
目の前に居るのは、俺なのに。


悔しい。
こんなにも焦がれてるのに。

こっちを見てよ。






腕を伸ばしてキスをした。
驚いて言葉もなく、ただ瞳は真っ直ぐに俺を見つめる。

2人きりの教室を、夕陽が彩った。


後悔は、なかった。



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