(1)
好きだ。
たまらなく、あいつが好きだ。
友達だったのにな。
いつの間にか、恋してた。
きっと、何気ない優しさ、真っ直ぐな瞳や頼れる背中に、じわじわと。
中学からの全寮制男子校という特殊な環境のせいか、同性愛はそこまで不思議なことではなかった。
同性という大きな障壁は無かったわけだ。
だけど、それ以上にだめだった。
「…好きだよ」
ぽつりと呟いてみる。
言いたくて仕方がなくて、だけど絶対に言えない言葉。
行き場をなくしたそれは、夕暮れ時の教室に消えていった。
好きだ、と言いたかった。
好きだ、と言えば良かった。
「何してんの?」
ガラリと開けられた扉と、響いた声。
そいつは真っ直ぐ俺へと歩いてきた。
そいつは、そう。
こいつこそが、まさに。
俺が焦がれる、その人が思いを寄せる奴。
切なげに想いを俺に伝えたあいつを思い出す。
困った顔で協力を頼んできた彼。
『親友のおまえしか頼れねぇよ』
鈍い痛みが、俺をまた傷つけた。
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