短編 | ナノ
(待望)



 カチリ。小さな音はやけに大きく響きました。私はまた絶望に息を吐きました。
 彼が来てくれないのです。来てくれるだろう彼の姿が、まだ無いのです。また一刻、私をあざ笑うかのように過ぎていきました。彼が来るには、まだ時間があるのでしょう。私は随分待ったような気でいても、実際にはあまり立っていないのやもしれません。私が一刻おきと思っている針の音は、実際には刹那に刻まれているのかもしれません。
 嗚呼、どうして彼は一刻も早く来てくれないのか!
 嗚呼、彼のいない時のなんと流れの遅いことか!

 カチリ。小さな音はやけに大きく響きました。独りきりの部屋で、私はまた絶望に息を吐きました。





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