短編 | ナノ
(嘘吐き)
彼の言葉は偽りだらけ。
本当なんて有りやしない。
だけどそれでも、例え大嫌いでも、俺は彼から離れられない。
恋というものは、まさしく薬物だ。
溺れて、もっと求めて、逃れられない。
俺はとうの昔に重度中毒者。
「ユウ、愛してる」
キスの余韻を震わす彼の言葉。
アイシテル
なんて陳腐な嘘だろう。
「、俺も愛してる」
俺は愛してる。
「知ってる、ベタぼれだもんな」
そう、その通り。
そして俺も知ってる。
彼にほんの薄くまとわりついている香りの理由を。
彼がどれだけ周りにアイシテルを言うのかを。
随分と前、問い詰めたこともあった。
謝った後、誤魔化すようにキスをした彼。
分かったんだ、その時。
貴方は悪いだなんて思っていなかった。
薄く上がっていた唇は、冷笑か嘲笑か。
それからは捨てられたくなくて、ずっと我慢。
だけど、もう無理。
最近さぁ、親友がすごい幸せそうなんだ。
ニッコリ笑って言うと、彼は眉をしかめた。
立派に中毒者の俺だけど、それでも痛みは和らがなかった。
だから、
「憎むんなら、1人を愛し尽くせないテメェを憎め」
歪んだ俺に、俺の愛しい人であった嘘ツキは目を見開いた。
だから、復讐だ。
俺が消えた部屋には、呆然とした嘘ツキと、彼の部屋の合い鍵。
それでも俺は、愛してたのに。
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