短編 | ナノ
(また堕ちる)




 綺麗だなぁと君がうっとりと呟くものだから、僕も斜めに空を見上げた。
 一面に広がる淡紅色の中に、丸くて赤い夕陽が、どんと大きく構えていた。
 こんな街よりもサバンナの方が似合うだろうに、なんでこいつはここにいるんだろう。
 悲しく見つめている先で、面白い程に早く沈んでいく。
 そんなに急いで、一体全体、何がしたいんだい。
 誰かに会いにでも行くのかい。
 その先に何かが在って、誰かが待っていてくれる自信はあるのかい。
 なんとも悲しい僕の呟きに、君は笑った。
 ここにいたいからここにいて、会いたいから会いに行く、それだけだよ。
 悲しそうに笑う君は、儚く笑う君は、例えようもなく美しかった。
 やっぱり、世界中のどれよりも君は綺麗だよ。
 だからこそ僕は、ここにいて君に会いたいんだと。
 僕はまたひとつ、君を愛する理由を見つけた。

 だから、僕の居場所は、きっと。



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