(彼の人、再来)
世界なんて嫌いだ、
そう言い切りながらも、俺は探してしまうんだ。
もうどこにも、彼はいないというのに。
俺の光は永遠に失われたというのに。
あぁ、誰か。
紅く穢れた俺を、
黒に沈んでゆく俺を。
あぁ、どうか。
雨は静かに、ただただ降り続ける。
夜の静寂と雨音が侵入してくる、冷えた水が温度を奪ってゆく。
彼と会ったのも、こんな日だった。
ずぶ濡れの俺は、死に場所を探すために足を動かしていて。
傘を差した彼は、穢れた俺に手をさしのべて。
おいで、と微笑んだ。
「ねぇ、そんなに濡れてどうしたの、」
「おいでよ」
あぁ、
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