短編 | ナノ
(おでんちゃん)



「寒くなってきたな―」
「うん、寒ぃ!」
「冬だから当たり前だろ」
「うっせぇ奴ら」

「…おでん食いたい」



おでんちゃん



「は―い、おでんパーティー始めましょうね―」

赤メッシュの開会宣言に、金髪が「はぁい!」と返事する。
まるで保母さんと保育園生そのもの。


「おら、主役登場だ」

極道よろしくなスキンヘッドが鍋をこちらに持ってくる。
集まった俺らからあがる歓声。

むさ苦しく野郎5人がひしめいているが、いつものことだ。
大学の学部が同じで、ずっと傍にいても気にならない。
全員一人暮らしっていうこともあって、気ままに泊まりに行ったりもする。


「…食べたかったんだろ」

ぼうっと眺める俺の髪を梳きつつ、超絶イケメン黒髪が訪ねてくる。

そう、食べたかった。
コンビニのおでんは嫌いで、だけど一人暮らしじゃ食べきれない。

実は、おでんは俺の大好物。


こくりと頷いて、行儀良く合掌する。
全員が一緒に、声を揃えた。




人肌恋しい冬。

あたたかい仲間と、繋いでくれる美味しいおでんちゃんに感謝のキスを。




大好きだ、おでんちゃん



「もち巾着が無い」
「え、あっ、肉あるよ!」
「大根美味しいよ―」
「…ちくわぶも無い」
「ほ、ほら、ちくわは有るぞ!」
「…無い」

「落ち込むな。おいハゲ、買って来いよ」
「あ、あぁ!」
「良かったじゃん!元気出せよ、な?」
「ほら、一緒に食べようね―」
「…ん」


おでん大好き不思議ちゃんと、愉快な仲間たち。

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