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いらなくなった薬指

『好きだよ、蓮二。』


そう言ったのは何度目だろうか。



毎回君は、あぁそうか、って


まともに聞いてくれやしない。




ずっと、ずっと


ずっと、ずっと




俺は君だけが好きだったのに。



君は違うでしょう?





目の前で、赤く燃えるハガキを眺めながら、俺は君を思う。




今頃、君はどれ程大人っぽくなっているだろうかとか、



今頃、綺麗なお嫁さんと結婚式を挙げているんだろうなぁとか、



今頃、君の薬指には指輪が嵌まっているんだろうなぁとか。







パチパチと音を立てて燃えていたハガキが、俺の名前を焼き尽くして、




長々と連ねられた文字を焼き尽くして、



次は女の名前を焼き尽くして、



今度は蓮二の名前を焼きにかかっている。






燃える、




燃える。




蓮二の名前が、






燃えて、




燃えて、




一文字目が消えそうに…










ジュッ、と

肉の焼ける音




少し強くなる焦げた臭い




俺の手には、



まだ少し赤いハガキ。








あぁ、痛いなぁ


でも蓮二の名前が消えなかったから、良しとしておこうか。






だって、


このハガキが無くなれば、


俺が蓮二の名前を見る事なんてもう、一生ないだろうから。








あぁ、




そういえば、





蓮二の為にとっておいた薬指も、いらなくなっちゃったね。






どうしようかなぁ。





そうだ、蓮二の結婚式は

確か今日だったね。





なら、



結婚式のプレゼントに、









この薬指でも贈ろうか。






そうすれば…





いらなくなった薬指



(優しい君は、俺の事を忘れられなくなるでしょう?)











お題サイト様より
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