02.やっと


勢いが良すぎたのか尻餅を付いた彼をお構いなしに、ぎゅうぎゅうと腰に回した腕の締め付けを強めて叫び、その逞しい胸板に頬を引っ付ける。

トクントクンと生きている証が私の鼓膜を震わせる。

エースくんが生きてる!

目の前にいる!

これは夢か!?そういえば夢だったな!


「たとえ夢でも幸せ〜…あいだっ!!」


幸せを噛みしめていると突然頭に痛みが走り、首根っこを掴まれてエースくんから引きはがされる。


「何してんだよい」

「おいおい女の子に乱暴って、お前」


真後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り向くと…


「マルコにサッチ!?はぅわぁぁ…!」


いるよいるよいるよい!

念願の1、2、4だよ!

エースくんから一旦離れて両手で顔を抑えて悶える私。


「…俺たちを知っててよく船に乗り込んで」

「キャー!生バナップル!格好いいー!愛しのマルコさん!」

「なっ…!?」


眉間にシワを寄せた彼が喋り終わる前に、風で揺れるそのシャツの間から腕を回して抱き付く。

一度ぎゅっとして少し離れてから今度はオヤジさまのマークを指でなぞる。


「誇りがちゃんとある…!」


生だよ生!でも夢…

しかし本物!


「おーい、エースー。しっかりしろよー」


後ろでサッチさんが固まっているらしいエースくんに呼びかける声がする。

その声にやっと現実に戻ってきたのか、動きが止まっていたマルコさんが動き出した。


「き、気色悪ぃことすんなよい!!ってか誰がバナップルだ!!」

「いっだあぁぁぁああい!!」


頭!女の子の頭叩いた!

ひっどい!

男の風上にもおけない!

私は頭を抑えて、正気に戻ったエースくんを笑っているサッチさんに駆け寄った。


「サッチさぁぁん!マルコさんが大人気なくいじめますー!」


駆け寄った私を「おー、かわいそーにな」と抱き留めてよしよししてくれるサッチさん。

なんと包容力のある方でしょう。

どこかのパイナップルかバナナか分からない人より断然出来た人ですよ。この方。


「サッチ、甘やかすなよい」

「良いじゃねえか。女の子だぜ?優しくするもんだろ」

「うぅ…ぐすん」

「痛かったなー」

「はい」


よしよーしと頭を撫でてくれるサッチさんに、顔を手で覆いながら体を預ける。

すると温もりが伝わってきて、やっぱり生きてるんだと感じる。

幸せパラダイスだよ!

夢なら一生覚めないでほしい!









やっと出逢えた


終わりたくない


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[mokuji]

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