43.意外なこと


side Marco


「マルコの言いたいことが分からない事もないけどなー」


いつの間にか復活したサッチが会話に割って入ってくる。

その顔はニヤニヤとしていて、とても見ていられるものじゃなかった。


「…きしょいよい」

「なんだとー!?」


俺の一言に幾つも返してくる。

いつもいつも、そうやってふざけているくせに。

他の奴よりも長く一緒にいたとはいえ…


「……チッ…」


…なんでそんなに鋭いんだよい…

こっちとしては厄介以外の何者でもないよい。

苛々して、その分酒の消費も早くなる。


「…いつもお前さんの行動には感謝してんだ」

「…っ」


不意に聞こえた言葉に、口元に運んだジョッキが一瞬止まる。

だがそれを悟られないように、今度はゆっくりと飲んだ。

驚いた。

いつも斜に構えているあいつが。


「………」


あのイゾウの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったから。

ここは、素直に喜ぶべきなんだろうかねい…


「好きにすればいいさ」


お前さんの気の済むまでな。

眉尻をほんの少し下げて、やわらかい表情でイゾウは俺を見た。

紫煙に紛れて消えてしまいそうな言葉は、ちゃんと俺に届いた。


「…ところで、さやかちゃんは?」


思い出したようにそう言ったサッチに、さっきの驚きで見聞色が解けている事に気づいた。

俺としたことが。


「…あそこだな」


イゾウが指さしたのは船内。


「………」

「行くのか?」


静かに立ち上がった俺に視線が集まる。

俺はチラリと、声をかけてきたエースを見て何も答えずに船内へ足を向けた。

パタンと。

船内に続く扉が閉められたのを見計らったように、自然と隊長格が集まりだした。


「グララララ…頑固に育ったもんだ」

「頑固、ねえ…」


イゾウは船内から夜空に浮かぶ月へと目線をうつした。


「俺なら心折れるぜ?」

「サッチの心なんて折れても支障ないよ」

「ハルタ酷ぇ!!」

「だって脆そうだもん」


ハルタの言葉に「違いねえ」と笑う隊長達。


「シクシク。俺の扱い酷くないか…?」

「そういう俺達も、信じ切っているかと問われれば、即答は出来まい」

「え、無視ですかビスタくん」


泣き真似を軽くスルーしたビスタに涙目になるサッチ。


「そーか?俺は悪い奴だとは思わねえぞ?」

「…嘘だろエースお前も無視かよ」

「俺達もそう思ってるさ」

「…俺もそう思ってるけど無視ですか」


サッチの心がボロボロ寸前なのに、誰もそれに気づいていないようだ。








意外なことも


その人の一部


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