42.もっと


side Marco


イゾウは肺いっぱいに溜めたであろう紫煙をフーと吐き出して、立てた膝に煙管を持った腕を乗せた。

相も変わらず絵になるやつだ。


「現にこの宴(とき)まで5分以上、隊長の目の届く位置から外れたか?」

「んー…わっかんね」


すぐに答えるエース。

考える気すら無いだろいお前は。


「………」


目の届く位置か。


「分かったみたいだな」


横目で俺を見るイゾウの視線から逃げるように、またジョッキに口を付ける。


「なあ?マルコ」

「……」


答は…外れてない、だ。

確かに言われてみればそうだ。

見聞色でずっと見ていたが、俺のいた食堂から出てビスタやジョズに合うまで。

一番長くてこの時。

それ以外は甲板か、俺達の目の届く範囲にいた。


「そんなに計算して動く奴かよい」


俺の質問に紫煙を吐き出してさやかを見るイゾウ。


「まあ、本人は無意識ってのもあり得るがな。少なくともさやかは俺達を知ってるんだ」


そうだ。

他の奴なら噂でしか知らないことも。

異世界から来たアイツは…

知っているのだ。

唯一存在する。

鉄の、掟も。

おそらく…

どれだけの絆があり、どれだけ互いを大切にしているのかも。


「加えて例外はあるが…遠巻きに眺めているのに、絶対に隊長無しで親父に近づかねえ」

「…あー」


納得したようなエースの呟き。

親父っ子のエースだから、きっとわかったんだろう。

たしかに、言われてみればそうかもしれない。

イゾウの言っていることは間違っていないはずだ。

見る目がある奴だとも思っている。

だからそれを疑いはしないが…


「関係ないよい」


どんなに頭が良かろうがどれだけ馬鹿だろうが。

どんな性格だろうが。

どれだけ良い奴だろうが。

この船のクルー全員が、あいつの事を信用していようが。

関係なんてないよい。

危害を加えないと確信できるものが無い以上、俺は疑い続ける。








もっともっと大人なら


迷うことなく言えたのに


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[mokuji]

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