41.いつか


side Marco


宴が始まって暫く。

結局言い合いの決着はつかないまま、さやかはラクヨウやブラメンコに連れて行かれた。


「騒がしかったよい」

「いつもの事だろ?」


不思議そうに首を傾げる末っ子に、ついため息が出る。


「今日は余計、らしいぜ」

「そーなのか?」


きょとんと。

イゾウの言葉に間抜けな顔をして首を傾げるエースを無視して酒を呷る。

エースは少し考える素振りをして次に顔を上げたかと思えば、ほんの少し眉尻を下げた。


「もしかしてマルコ、お前まだ…」

「…だとしたら、なんだよい」


エースの続く言葉が分かった俺は遮るように言って、また酒を呷る。

もしかしても何も。

それが俺の、今の仕事だ。


「お前は良い。そのままで」

「…マ…」

「いいんだよい」

「………」

「……」


鬱陶しがられるのも。

誰かを疑うことも。

傷つけることも。

嫌われるのも。

傷つくのも。

汚れ役は…


「俺だけで」


俺1人で良い。


「………。」

「………」

「マルコ…」

「………ふう」

「…イゾウ…?」

「…アイツは、な」


少しの、静かな空間。

まだ煙草を吸っていないのに、その息には紫煙が混じっているように見えた。

刺すような空気が紫煙で濁る。

視界が、悪くなる。

口を開いたのは、やはりイゾウだった。


「さやかは気づいてるだろうなあ」


まるで一人言を言うような口調。

その呟きに横目でイゾウを見る。


「………」

「何がだ?」

「あぁ?俺達がまだ信用しきってねえってことに、だ」

「…そーか?」


エースはもう疑ってはいないのだろう。

何故だとでも言うように首を傾げている。

イゾウは「そーだ」と言いながら懐から煙草…あれは確か“きせる”っつったねい。

その煙管を取り出して別の手で持つと、あいた手をまた懐に入れようとした。

何かに気づいたエースは人差し指をイゾウの方に伸ばす。

すると煙管の先端に小さな火がつき、消えた。


「あぁ、ありがとさん」

「ニシシ、おやすいごよーだ」


手を足元に戻して笑うエース。

気が利くんだか周りをちゃんと見てないんだか。


「シシシ!」


…半々だな。








いつかは失う

例えそうだとしても


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