37.ゆらり


side Marco


盛り上がり騒ぎまくるクルー達。

久しぶりの宴、それに加え久しぶりの妹ということもあり、皆浮かれているようだ。


「……」

「なんだ、時化た面して」


顔を上げると両手に酒の瓶を持ったイゾウが立っていた。


「嫌われ者同士、飲もうぜ?」


赤い唇をきれいに釣り上げ笑う姿は、同姓の俺から見ても色っぽいと思う。

妖艶で。

よく、読めない。


「お前は少し違うだろうよい」

「そうか?アイツの嫌いは一応はっきりしてる。さやかは俺もお前も、嫌いなんだぜ?」


ま、正確に言うと“苦手”なんだろうがな。

そう呟いたイゾウの声は、騒ぎに紛れて聞こえなかった。

さやかをちらりと見ると、クルー達と楽しそうに話していた。

暫く見ていると、話のきりが良いときに立ち、移動しているようだ。

さり気なく隊長達に挨拶をしてまわっているのだろう。


「律儀じゃないか」


分からないように見ていたのに、イゾウにはバレてしまったらしい。


「……」


だが俺は何も反応しない。

反論をしたとしてもこいつが相手だと勝てる気がしない。

と言うか勝てたためしがない。

手にあるジョッキを口に運んで、半分くらいあった中身を一気に飲み干す。

そんな俺を見てイゾウはクツクツと笑った。


「…なんだよい」

「いやあ?」


口元に手をもっていき笑いながら下から見上げてくるイゾウ。

そうすると余計色気が増す。

そして隠される。

奴の真意が。

何を考えている…?

見透かされているようで、たまに怖く感じるその瞳。


「はぁ…」


しかし、コイツと居るのは嫌いじゃない。

こういうタイプは敵にまわすと、きっと厄介なんだろうな。

そんな事を考えながらまた次の酒に手を伸ばす。

遠くで隊長達と話すさやかの声が聞こえる。








ゆらりゆらゆら


それはいつも、届かない


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