01.なくなった


「…いっ、たたた…」

「おいお前!どっから湧いて出てきた!」

「お前さては能力者か!」

「答えろ!」


打ったお尻や体の所々を撫でる私に向けられる怒声の数々。

顔を上げて漸く気づいた。

只今わたくし、脅されなう☆

って、ちっがあああああう!!

なう☆…じゃねえよ!

私に向けられてんの、コレ剣よ!?銃よ!?


「…………」


死亡フラグたってるぅぅぅぅぅ!!

私は後ずさるが、すぐ後ろは壁で周りはむさ苦しい男だらけ。

どこにも逃げ場はない。

やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ矢田!

“やだ”打ちすぎて“矢田”になったじゃないかコンチクショウ!

変換機能のバカ!

……だから違うってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

このままじゃ殺られちゃう…!

可愛くもなければデブで存在理由が分かんないかもしれないけど!

誰か夢だと言ってくれ!

私はまだ死にたくないんだよぉぉ!!


「なんだ?」

「あ、隊長!!」

「コイツが!変な女がいきなり現れて!」


ほんっとにヤなんだけど…!

こんな事なら人生もっと楽しんどけば良かったよ!


「おい」


例えば…そう!

あの偉大なる海賊漫画を千回読み返すとか!


「あのー」


台詞が言えるくらい読めば良かった!


「もしもーし」


誕生日みんな祝ってあげたら良かった!

それからそれから…


「おーい」

「おじさま方に会いたいぜよー!そしてあ奴に成敗をー!!」

「…無視か?」

「煩いな!今人生最後かもしれない願い…を…」


あまりにもしつこい声につい怒鳴る。

そして言いながら顔を上げて…言葉を失った。

うん。文字通りだね。

この言葉作った人も、こんな間抜け顔したのかな?

…それくらい私の今の顔は、酷いと思われ。


「…なんか顔に付いてるか?」


口をぽかんと開けながらも声をかけてきた男を舐める用に見る。

足から毛先まで。

黒いブーツに黒いズボン。

胸に光るのは赤い玉が沢山付いたネックレス。

顔には母親似のそばかす。

黒く癖のある髪。

その顔は紛れもなく…


「っ…!ええええ、エースぅぅぅぅぅ!」

「「「っ!?」」」


顔を見た瞬間その逞しい胸にダイブ!


「!?…の、あっ!」

「夢でも何でも良い!好き好き大好き愛してるっ!」









なくなったはずのもの


きっとあれが、夢なのだ


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