31.変わらない


先ほどよりも人の増えた甲板に出てみたのはいいのだが。


「何かって、ねえ…」


みんなが運ぶ物は重そうな物ばかり。

樽とかジョッキ数十段重ねとか。

私だって多少力には自信がある。

みんなよりもそういう物はよくやったし頼まれもした。

だけど…

悔しいけど…

きっと話にならないよね。

比べるだけ無駄だもん。

この世界と向こうでは身体能力の基準が違う。

あ、違った。

“この船”と、だ。

まず比べてはいけません。

あーあ。

暇だなあ。

というか…


「何してるの?」

「ぅええぇぇぇいつ!」


だだだ誰!?

振り向いた先には満面の笑みを浮かべた王子様がいた。

つか背後に立つなって言ってるじゃないか!

ハッ!?

…言ってない…!

不覚っ


「はは、確かに面白いね」

「は?え?…私?」


私のことなのかい?

人差し指で自分を指さすと、彼はにっこりとした顔のままコクコクと頷いてくれた。


「おれハルタ。あ、知ってるんだっけ?まあいいや。とりあえず、よろしく」

「さやか、です」

「知ってるよ」

「ですよねー」


あー。

想像通りだわあ。

癒されるー。


「顔、だらしないことになってるよ」


毒舌加減も健在ですね。


「えー、だってー」


嬉しいもん。

あの青いオッサンのような“だられきった正義”は掲げませんが“だらけきった顔”ならいくらでも掲げてやりましょうぞ。

あー!

そういえば、この王子様はまだだった!

危ない危ない。

こんな癒やしをみすみす逃してたまるかよい!

……パインの口調がうつったぁぁぁぁああ!

何故じゃぁぁぁぁああ!


「また百面相。疲れないの?」

「全然!」

「そう」

「あの、一つお願いしても良いですか?」

「ん?なあに?」


なあにって…

なにじゃなくてなあにって…

か…

可愛い…っ








変わらないのはお互い様


きっとあの日のままで


[ 33/54 ]
[*prevnext#]
[mokuji]

top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -