22.面白い


side Izou


家族としてこの船に増えたひとりの女。

彼女…さやかは異世界の人物だという。

全く信じがたい話だ。

誰もが不信がるだろうよ。

実際俺も怪しい奴だと警戒してはいる。

他の隊長たちも、一応な。

まあ、親父が認めたんだ。

どうせ杞憂に終わるだろうがな。

しかしまあ、何とも不思議なことが起こるもんだなあ。

嬉しいことにさやかはその別の世界で俺達のことを知っていた。

そして俺達が好きだという。

物好きな女だと思ったが、悪い気はしない。

奴も、そう感じているはずだ。

俺達みたいな無法者を好む奴なんざ、同業者か娼婦くらいだからな。

こんな、いかにも一般人ですという風貌の女に好かれてるなんて聞けば、誰だって悪い気はしないさ。

だがまあ。


「複雑、だろうな」


奴は。

ふう、と肺に溜まった紫煙を吐き出す。

ふわりふわりと舞い上がり、風に消える。

なんとなしに歩いていると、甲板の方から声が聞こえた。

…さやかか。

なんか「痛い」つってねえか?

その後サッチの止める声が聞こえた。

やったのはマルコか。

そんなに苛めてやるなよ。


「女の子は柔くて傷つきやすいんだからさ、もっと優しく扱わなきゃ。なぁ?」


さすがサッチ。

わかってんじゃねえか。

サッチの言葉にマルコが言い返す。


「それのどこが“柔く”て“傷つきやすい”んだよい」


おうおう。

酷い言いようだなあ。

わざわざ強調して。

俺はまた、なんとなしに甲板に向かう。


「こんなんでも女の子だろ?」

「っ!?」


出たところでサッチのそんな声が聞こえ、崇め奉るように胸の前で手を組んださやかの顔が、ショックを受けて壊れていく。

はじめ見たときも思ったが、ころころころころと。

面白い奴だなあ。








面白いのも不思議なのも


今でも変わってはいなかった


[ 24/54 ]
[*prevnext#]
[mokuji]

top


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -