28.食欲 「ほらよ!お2人さん」 カウンターの向こう側からサッチさんが出してくれたのは、おそらくマルコさん用のコーヒーと。 「…これ、何ですか?」 「ココアだよ。あれ、もしかして飲めない感じ?」 少し慌てるサッチさんに、ひとくち口に含んで「美味しいですね!」と告げると、だろう?と自信ありげな笑顔が返ってきた。 「じゃ、俺は用事があるから。じゃーねー」 陽気な声でキッチンスペースの奥の部屋に行くサッチさん。 多分キッチン専用の部屋だ。 開いた一瞬、もの凄く良い香りがしたもん。 「あー美味しっ」 もう一度口に含んだココアを飲み込んで呟く。 チラリと横目でマルコさんを見ると、どこから取り出したのか、新聞を片手にコーヒーを飲んでいた。 少し覗いてみたがよく分からず、結局元の位置でココアを飲む事に。 少し、静かな時間が流れた。 ああ、こんな時間も嫌いじゃないな。 なんて考えていると、いきなり食堂の扉が開いて騒がしい人物が飛び込んできた。 「サーッチ〜って、マルコにさやか!何でお前らがここに?」 「…案内終わりの一服?」 「なんだよそれ」 「何ではこっちの台詞だよい。エース」 新聞をパサリと置いて振り返ったマルコさんに、ピクリとエースくんの肩が揺れる。 ってかマルコさんマルコさん。 足を組んで片肘をカウンターに置いて頬杖だなんて。 アンタ随分と良いポーズしてるじゃあないですかね。 モデルになれますよ。うん。 「いや、ちょっと、小腹がすいたから、3時の、おやつをと…」 「それはいいよい」 え、いいのかよ。 私はマルコさんが置いた新聞を綺麗に畳みながら心の中でツッコんだ。 だってさっきビスタさんが摘み食いだって言ってたじゃないか。 食欲には 勝てない人もいるわけで [*prev|next#] [mokuji] top |