16.昔から


周りの威圧感に押しつぶされるかと思った。

それよりも。

気を抜けば、その渦に飲み込まれると感じた。

でも今は…


『さやか』


しっかりとした声で。

強く、凛として。


『俺の娘になるか』


全てを包み込んでくれたのは、あの手だけではなかった。

その声も、オーラも。

彼が発するもの全て。

私を包む全てが、とても優しくて。

やっぱり、彼は偉大だと。

海のような人だと思った。


「グララララ…娘が出来るのは久しぶりだなあ」


私は隣にいる親父さまを見上げる。

みんなは持ち場に戻った。

甲板にはまだ大勢いるが、今この空間にいるのは私と親父さま。


「そうなんですか?」

「ああ。だからあいつらも嬉しいのさ」

「なんだか照れますね」


笑う私に近づく足音と、妙な威圧感。


「おい」

「…なんですか?バナナさん」


そう。

この空間には残念なことに親父さまと2人きりではないのです…!

なんということ!

せっかくの和やかタイムが…!!

このバナップルめ!

ふざけるなチクショウ。


「マルコ」


親父さまのその一言で何かをりかいしたのか、チラリと親父さまを見てから私に目を向けた。


「…あぁ。さやか、ついて来るよい」

「へ…?」


それも一瞬。

そう一言だけ言うと、スタスタと歩いていくマルコさん。

言い逃げですか!?

へ?って聞いたよね!?

無視とか酷くね!?


「な、何よ…!!」

「そう嫌ってやるな。アレは、俺達のためなんだ」


マルコさんが消えた方に向かって、べーと舌を出す。

そんな私に向けて言われた親父さまの言葉に、頬を膨らませながらもそちらを向く。

そんな事、言われなくても分かってる。

自分が嫌われ者になってでも、どんな目にあっても。

大切なものを守るためならなんだってする。

いるんだ。

そういう人が。

特にこの世界では。

…たくさん。


「…嫌ってはいませんよ」


嫌うわけない。

そんな“強い”人を。

嫌う理由なんか、どれだけ探したって見つかりっこない。

それどころか、


「寧ろ尊敬してます」

「そうか」


私の言葉に、親父さまは目を細めて…

笑った気がした。








昔からそうだった


いつもいつも、誰かのため


[ 18/54 ]
[*prevnext#]
[mokuji]

top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -