12.嫌い 「証拠ではないですが…ほら!」 「うお!ルフィのTシャツ!」 「漫画のワンシーンなんですよ!それから…ファイル、シャーペン、キーホルダー」 さやかが鞄から物を出す度に周りが騒ぐ。 それもそうだろう。 出したものほとんどが白髭海賊団の物なのだから。 「おおマルコ!」 「サッチもあるじゃねえか!」 「ビスタ隊長がいる!」 「ジョズにハルタ!」 「イゾウ!」 「エースでけぇ!」 隊長達がほぼだが、出てくる度に騒がしさが増す。 そして… 「それから…この、ポスター!」 「「「っ!?親父!!」」」 「グラララ!」 「なんかいっぱい出てくるな!」 「まだまだ、こんなもんじゃないですよ!これは…どうだ!」 そう言いながら出したのはモビー・デック号のぬいぐるみ。 「うおお!モビー!」 「ちっちぇー!」 「可愛いでしょう?あ、燃やさないでくださいね」 「おう!ってさやか、なんで手袋してんだ?」 「今から出す物に、指紋や汚れをつけたくないからです」 それほどの物なのかと皆興味津々の様子でさやかを見る。 しっかりと黒い手袋をしたさやかは、ゆっくりとその物を出す。 「なっ!!」 「私のもってる中で一番高かったものです!」 言いながら床に置かれたそれは、エースとエースの弟が背中合わせになっている… リアルな人形のようなもの。 なんだあれは… 「これはフィギュアといって、細かいところまで精密に再現された人形です!コレは残念ながら小さいですが、大きい物は本人と同じ大きさがあったりします!」 「すっげえ!ルフィだ!」 「ぎゃぁぁぁぁあ!触らないで下さい!!」 「あ、すまねえ」 「あ、いえ。手のひらサイズなら他にも沢山あって、持ってきたのはこの親父さまと…」 「「「親父がちっせぇ!」」」 手のひらサイズなのに精工に出来た親父の人形に、また、騒がしさが増す。 うるさいったらありゃしない。 「あとですね、こんなのもあります」 そう言って出したのは… 「……、」 「グラララ!マルコじゃねーか」 そう、俺。 しかも。 「小さいですけど、私はコレが一番のお気に入りです。この、不死鳥が」 「…今にも飛びたちそうだな」 イゾウがしみじみと言う。 確かに、今にも飛んでくるんじゃないかってほど精密に再現されたそれ。 改めて自分を見ていると、少し恥ずかしい気もした。 「私は、この世界が大好きです」 ずっといたいくらい、とさやかは続けた。 「帰りたくねえのか?」 嫌いではないのに どうすればいいのだろうか [*prev|next#] [mokuji] top |