08.偉大


この…馬鹿力…!

もっと他のところで有効活用しろよ!


「…ぁ……っ…」


苦しい…

足を動かしてもぷらぷらと宙を舞うだけ。

手に力を込めて握っても、彼はビクともしない。

ヤバい。息…が…っ


「おいマルコ」

「…親父」

「離してやれ」

「だが」

「早くしねえと死んじまうぞ」

「……チッ」


首元の締まりが無くなったかと思ったら、私の体はそのままどさりと床に落ちた。

また…っ

腰打った…!


「ゲホッゲホッ…っ…」


大きく息を吸い込んで、肺を空気でいっぱいにしてやる。


「大丈夫か?」


すぐに駆け寄って背中をさすってくれたエースくんを手で制してマルコさんを睨む。


「本気で首絞めるなんて最っ低!白髭海賊団は無闇に人に手を出さないって、殺さないって信じてたのに!好きで、マルコさんも大好きだったのに!このバナナ頭!」

「怪しい奴は例外だよい。あと、誰がバナナだよい!」

「なにさ!パイナップルの方が良かったの?どっちも似合うから間をとってバナップルだね!!」

「もう一回殴られてぇのかよい」

「まあまあ、落ち着けよ」


毛を逆立てて威嚇する猫のような私と、額に青筋を浮かべて顔がひきつっているマルコさんの間にサッチさんが割り込んでくる。


「サッチさんの方がずっと大人よ!話聞いてくれるし」

「話は聞いただろい。話を聞くのと良し悪しを判断するのは別だよい。良し悪しを決めるのはお前じゃねえ。俺たちだ」

「アンタにはもう話さない!親父さまに聞いてもらうもん!」


話が通じなくて何が決めるのは俺たちだ、よ!

呆れてものも言えやしない。

私は、こんな大勢に囲まれていても余裕で見える親父さまの方へ歩いていく。

近くまで来ると、ものすごい威圧感があった。


「おっきい…」

「マルコにあんな態度とるたあ、とんだじゃじゃ馬だなあ小娘」


例の大きな椅子に座りながら彼は言った。


「………」


あんなに意気込んでいたのに、いざ本人を目の前にすると声が出ない。

凄いや、白ひげという人は。


「……、…」


何も言えずに拳を握りしめていると、重くてずっしりとした、でも優しく温かい手が頭を撫でた。


「話してみろ、俺ぁ信じてやる」

「親父さま…」


偉大という言葉は、きっとこの人のためにあるんだなんて、そんなことを考えた。


「やっぱり白ひげは、偉大で憧れです」


世界中の人が、こんな人なら良かったのに。


「グラララ。とんだ殺し文句だな」








偉大で最強の男


きっと彼に、救われてた


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