4 「うっわー」 「ここまでくるとすげえの一言だな」 サッチとイゾウに見られ(見守られ?)ながらした採点。 結果はもちろん。 「…全問正解…」 マジかよい。 30問正解したときからまさかとは思ったが… 「……」 「お前まさか…」 「いや、一応約束は約束だ。ちゃんと守るよい」 「中間が無事に終われば、ラブラブデートだな!」 「サッチ、テメェもし…」 「いや、さすがに言わねえから!だからその拳をおさめてください!」 「……」 「え、何その目」 「お前は口が軽いからねい」 「いや俺どんだけ信用無いの!?」 「お前に信用なんてあるのかよい」 「それ酷くない!?」 やいやい騒ぐ俺達。 「ちょっと待ちな。ここは職員室だぜ?」 イゾウが止めてくれることでその場はおさまった。 幸いここには俺達三人以外誰もいなかった。 「マルコも考えろ」 「…よい」 「サッチ、お前は面白がりすぎだ」 「へーい」 やっぱり面白がってんじゃねえかよい。 睨んでみるも、へらりと笑われて終わった。 俺は机の上に手を伸ばす。 落ち着くために手にとった缶は、すでに中身が無くなっていた。 「ま…後は中間だな、マルコ」 「……」 おいイゾウ。 お前もぜってえ楽しんでるだろ。 「アイツならマジでやっちまうだろうな!」 「どうだろうなあ」 「………」 「意地悪してちょー難しい問題にしてやるなよ?」 「…分かってるよい」 ま、偶然って事もある。 この100問は水城が解く用に作った問題だからな。 まさか中間で満点なんて。 ましてやあいつがとれるわけがない。 あの水城が。 そう、高を括っていた。 「ククッ」 「なっ…!」 「ほーらな?」 楽しそうな二人。 「俺言っただろ?」 あいつすげーんだよ。 ほんと。 サッチが続けた言葉に返すこともせず、俺は回答用紙を眺めていた。 俺が作ったテスト。 何度も見直して、採点した。 結果は言うまでもなく。 「満点かよい…」 今までの点数と俺の苦労は何だったんだ。 「なんか俺のまで満点だったぜ」 「俺んとこは惜しくも1問間違いだったな」 「…はぁ…」 もう、ため息しか出てこない。 「頑張ったんじゃねえか、認めてやれよ」 「…よい」 「こないだのテストを返すよい…」 あからさまに肩を落とす俺を見て、教室のあちこちから声が上がる。 「先生大丈夫?」 「気分悪いの?」 「いや…」 とりあえず否定をして返していく。 あいつがお前らみたいに素直で純粋だったら… …はぁ…お前らはいい子に育ってくれたよい… 見渡すとみんな首をかしげていた。 しかしその中に一つ、期待に満ちた笑顔を浮かべているやつがいた。 言わなくても分かるだろう。 「…水城」 「はーい!」 「……よい」 名前の横に堂々と書かれた三桁満点の数字を見て「やったあ!」と飛び上がる姿は今までに何回か見てきたが… 今回は違う。 そう。 俺の心が。 「何々ー」 「水城さんどうしたの?」 「見て見て私やったよ!」 そう言って自分の回答用紙を見せびらかす。 「「おぉー!」」 回りからは拍手がおこる。 それを黙ってみていると、不意にクルッと水城がこちらを向いた。 「せんせーは誉めてくれないの?」 これも、今までに何度か見た光景。 そうだ。 今までと同じだと、思えばいい。 「…よくやったよい、水城」 「でっしょー?エースくんのも期待しててね!」 「あぁ…ぁあ!?」 俺が何か言う前にパタパタと自分の席に駆けていった水城。 エースは水城と同じ学年で隣のクラスの超悪ガキだ。 そこも今年は俺が担当しているのだが、アイツは当たり前のように殆ど赤点をとってくる。 なのに今回はどうだ。 なんと平均点少し上。 誰が教えたらこんな… そう思っていたのだが。 教えたのは水城、まさかのお前かよい… 「…何てやつだよい…」 小さく呟いた俺の頭にサッチの「あいつすげーんだよ。ほんと」と言う声が響いた。 [*prev|next#] [mokuji] top |