「うっわー」

「ここまでくるとすげえの一言だな」


サッチとイゾウに見られ(見守られ?)ながらした採点。

結果はもちろん。


「…全問正解…」


マジかよい。

30問正解したときからまさかとは思ったが…


「……」

「お前まさか…」

「いや、一応約束は約束だ。ちゃんと守るよい」

「中間が無事に終われば、ラブラブデートだな!」

「サッチ、テメェもし…」

「いや、さすがに言わねえから!だからその拳をおさめてください!」

「……」

「え、何その目」

「お前は口が軽いからねい」

「いや俺どんだけ信用無いの!?」

「お前に信用なんてあるのかよい」

「それ酷くない!?」


やいやい騒ぐ俺達。


「ちょっと待ちな。ここは職員室だぜ?」


イゾウが止めてくれることでその場はおさまった。

幸いここには俺達三人以外誰もいなかった。


「マルコも考えろ」

「…よい」

「サッチ、お前は面白がりすぎだ」

「へーい」


やっぱり面白がってんじゃねえかよい。

睨んでみるも、へらりと笑われて終わった。

俺は机の上に手を伸ばす。

落ち着くために手にとった缶は、すでに中身が無くなっていた。


「ま…後は中間だな、マルコ」

「……」


おいイゾウ。

お前もぜってえ楽しんでるだろ。


「アイツならマジでやっちまうだろうな!」

「どうだろうなあ」

「………」

「意地悪してちょー難しい問題にしてやるなよ?」

「…分かってるよい」


ま、偶然って事もある。

この100問は水城が解く用に作った問題だからな。

まさか中間で満点なんて。

ましてやあいつがとれるわけがない。

あの水城が。

そう、高を括っていた。








「ククッ」

「なっ…!」

「ほーらな?」


楽しそうな二人。


「俺言っただろ?」


あいつすげーんだよ。

ほんと。

サッチが続けた言葉に返すこともせず、俺は回答用紙を眺めていた。


俺が作ったテスト。

何度も見直して、採点した。

結果は言うまでもなく。


「満点かよい…」


今までの点数と俺の苦労は何だったんだ。


「なんか俺のまで満点だったぜ」

「俺んとこは惜しくも1問間違いだったな」

「…はぁ…」


もう、ため息しか出てこない。


「頑張ったんじゃねえか、認めてやれよ」

「…よい」








「こないだのテストを返すよい…」


あからさまに肩を落とす俺を見て、教室のあちこちから声が上がる。


「先生大丈夫?」

「気分悪いの?」

「いや…」


とりあえず否定をして返していく。

あいつがお前らみたいに素直で純粋だったら…

…はぁ…お前らはいい子に育ってくれたよい…

見渡すとみんな首をかしげていた。

しかしその中に一つ、期待に満ちた笑顔を浮かべているやつがいた。

言わなくても分かるだろう。


「…水城」

「はーい!」

「……よい」


名前の横に堂々と書かれた三桁満点の数字を見て「やったあ!」と飛び上がる姿は今までに何回か見てきたが…

今回は違う。

そう。

俺の心が。


「何々ー」

「水城さんどうしたの?」

「見て見て私やったよ!」


そう言って自分の回答用紙を見せびらかす。


「「おぉー!」」


回りからは拍手がおこる。

それを黙ってみていると、不意にクルッと水城がこちらを向いた。


「せんせーは誉めてくれないの?」


これも、今までに何度か見た光景。

そうだ。

今までと同じだと、思えばいい。


「…よくやったよい、水城」

「でっしょー?エースくんのも期待しててね!」

「あぁ…ぁあ!?」


俺が何か言う前にパタパタと自分の席に駆けていった水城。

エースは水城と同じ学年で隣のクラスの超悪ガキだ。

そこも今年は俺が担当しているのだが、アイツは当たり前のように殆ど赤点をとってくる。

なのに今回はどうだ。

なんと平均点少し上。

誰が教えたらこんな…

そう思っていたのだが。

教えたのは水城、まさかのお前かよい…


「…何てやつだよい…」


小さく呟いた俺の頭にサッチの「あいつすげーんだよ。ほんと」と言う声が響いた。

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