ロー日和


ある晴れた日の午後。

波の上を揺られながらの居心地の良い一時を、甲板にで本を読みながら過ごしている男。

この船の船長にして“死の外科医”の異名を持つ、トラファルガー・ローその人。

彼の読書タイムを邪魔しないように仕事をするクルー達。

理由は簡単だ。

怒ると厄介。と言うか怖い。

ただそれだけ。

だから下手に刺激しないようにと、今まではほぼ上手くいっていた。

…ある少女が乗るまでは。

今日もまた、大きな音をたてて開いた扉の向こうからその少女…あすかが出てきた。


「良い天気だ!ローさん日和だ!!」

「なんだよそれ」

「やあシャチ!ローさん日和はローさん日和!あ!ローさん発見!」

「あ、今は行かねえ方が…ってもう行っちまってるし」


シャチはローに向かって走っていくあすかを止めるために伸ばした手を力なく下ろした。


「ろーおーさん!あっそびーましょ!」

「…気を楽にしろ、すぐ終わる」

「いや何する気ですか!?ってか刀しまってぇぇぇえ!!」


最近ではこれが日常になりつつあった。





 ロー日和





「あうぅぅぅ…」

「あすか、お前いーかげん諦めたらどうだ?」


食堂で項垂れる私に声をかけてきたのは、このハートの海賊団のクルー、シャチ。


「命いくつあっても足んねぇぞ?」

「シャチもローさんも酷い!私はただ遊びたいだけなのに…!」

「だからそれが無謀なんだってば」

「…むぅ…」


頬を風船のように膨らまして、テーブルに突っ伏す。

朝起きて、私は早起きだから朝一番で洗濯物をする。

終わった頃にはみんな起きてきて、朝食が出来ているので食堂で食べる。

食べ終われば洗い物の手伝いをして、寝坊してくるローさんにコーヒーを淹れてあげる。

その後は天気が良ければ甲板掃除か、クルーのみんなとワイワイ遊ぶ。

昼食が出来たらそれを食べて、洗い物をする。

それが終わればローさんに遊んでとせがんでいつも切られそうになる。

仕方がないからまたクルーと遊んで…

それが私の日課。

断られることも日課に入ってるって?

そんなとこ気にしないの!


「何でそんなに船長に構うんだ?」


隣に座っているベポをぎゅうっとしていると、シャチがそんなことを聞いてきた。


「え?」


なんでって…


「好きだから」

「ぶほっ!?」


飲んでいたお茶を吹き出したシャチ。

汚い。


「す、ストレートだな」


テーブルを拭きながら言うシャチ。


「あすかは本当にキャプテン好きだねー」

「うん、大好きだよー」


この船に乗ったのもそれが理由。

所謂一目惚れってやつ?

見つかれば殺されるかなとも思ったけど、この気持ちに勝るものはなかった。

恋って凄いね。

まあ実際見つかったときは危なかったけど、私の強さと、それを認めたみんなの説得のおかげで今はこの通り。

戦闘員としてもちゃんとやってますよ?

毎日楽しいし。

みんな優しいし。

…でも、ね。


「あうー…」

「なんだあすか、また駄目だったのか?」


聞こえた声にガバッと顔を上げると、私の救世主が立っておられました。


「あ!ペンギン!そーなの」


ペンギンは私の強さを見込んで、一番積極的にローさんを説得してくれた人。

こうやって慰めに来てくれるというか、何かと気にかけてくれている。

感謝感謝。

感謝だけじゃ足りないくらい!

すっごくいい人なんだよ?


「また刀抜かれそうになったの。ってかルームされた」

「おお、なんかレベルが上がったな」


そうなのだ。

これだからますます近づきにくくなる。

…と、普通はそう考えるのよね。

でも私は違う!

私はより燃える方!


「ぜっっったいに!いつか遊んでやるんだから!」

「あすかが燃えてるー」

「…目標が低いとか以前に無謀なことに気づけよ。そろそろバラバラにされる予感がする」


ゴォォォォォ!と燃える私を見ながらシャチが言うが、私の耳には届いていない。

ほらそこ、都合良いとか言わないの。


「まあ良いじゃないか」

「止めないのか?」

「…満更でも無さそうだからな」

「「……?」」

「素直になりゃ良いのに」


そう呆れたように言ったペンギンの言葉は、私には聞こえていなかった。

ただ、その会話の一部始終を聞いていた人物が他にも居たことは、誰も気づいていなかった。





(島!島だよベポ!)

(ほんとだねー)

(降りたら何しようかなあ)

(あすかは俺に付き合え)

(ロー、さん?)

(…不満か?)

(…全っ然!!)





あれ、ローさんがはじめしか出てきてない…

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