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楽しいバカンスの2日目は慌ててかけこんだ朝食ビュッフェに始まり(無事間に合った)、ナックルシティの待ち合わせスポットでもあるポケモンボール銅像のエリアをブラブラと観光していたらあっという間に時間が過ぎ去った。

ビュッフェは流石に高い追加料金を払った甲斐あって、大満足だった。ズラッと並んだ料理は見た目も映え映えで麗しいことこの上ないうえに、どれを食べてもバツグンに美味しい。朝から苦くなるほど食べ過ぎてしまったくらいだ。

そしてボール銅像。なんであそこにあんなもの建てたのかは一切不明だが、町並みとは妙に色合いがあっていて思ったよりも悪くなかった。
ナックルシティはキルクスと違って雪がない。緑萌える木々とレンガ造りの家々が並ぶ町並みは見慣れない分、旅情緒があって魅力的で何枚も写真を撮ってしまった。ナックルシティはガラルの中世の町並みがそのまま残っているらしい。悠久なる歴史の息吹を感じながらオレもちょっと真面目になって観光してみた。
民家は茶色やグレーのレンガが多いが、城は黒っぽいんだよな。あれはドラゴンの鱗を表現しているのかもしれない。羽の様に広がった見張り塔が手前の家々よりも大きく空に広がっている景観は、遠近感が完全に狂って見えてオレにはとても面白い。

そんな風に散々城の周りを散歩した後で、道端にあったいい感じのカフェに入った。スマホをいじりながら次の目的地を考える。
観光のメインにしようと思っている城は後日のお楽しみだ。宝物庫見学ツアーを予約しているから、その開催日と一緒に回る予定。今日は結構歩き回ったし、どこかでゆっくりしたい気分だな……よし。
事前にチェックしておいた施設のページを開く。本日の午後はココ!邸宅を改装したサロン風のゲイサウナにいくぞ!幸いにもこのカフェからわりと近くにあるので、カップの中を飲み干してから早速向かうことにした。


ついたサウナは外観は本当にただの民家で、ネットで調べておかなかったら素通りしてしまいそうだった。施設内は清潔で、インテリアもナックルシティの雰囲気に合った中世風。設備もドライサウナからジャグジーまで一通りそろっていていい感じだ。そして、肝心の客層はーー。

「(ん〜結構若めの人が多いな。オレのストライクゾーンにはまだ早い……)」

それでもこの時間帯にこの客入りはなかなかに当たりのサウナなんじゃないか?と思いながらジャグジーに浸かりつつ行き交う客を物色する。まあ昨日は結構疲れたから、普通にデトックスを楽しんでもいいかもな〜垢すりとかあるなら頼もうかなあ、なんて考えながらゆっくりと肩まで湯船に沈める。
のんびりと過ごしていると、対面でイチャイチャしている2人組の会話が耳に引っかかった。

「南地区のバーって、なんか運がいいと有名人に会えるらしいぞ」
「有名人?誰?」
「さあ、でもウワサによるとプロトレーナーの誰かだって」
「ハハッ、そんなんマイナーリーグ選手だったら、オレ目の前にいても分かんないかも。てか南地区ってどの辺のだよ。そんなところにバーなんてあったか?中央じゃなくて?」
「まあウワサだから。確かにあっちの方が店も人通りも多いよな。この間行った時もさ……」

そんなことを肩を抱いて寄りそいながら話すカップルをチラリと横目に見つめてから視線をそらす。

「(パートナーか……)」

イチャつく若者の空気に当てられて、ひとりそんなことを考える。
いずれは欲しいよなぁ。今すぐってわけではないけど、一生を共に過ごしたいと思えるような素敵な人。

そもそもキルクスは出会いの場がないから、あそこでパートナー作るなんて考えたことなかったけど……。こうしてそれなりにゲイシーンが育っている町に来ると、そういうのもいいなと思う。
でもキルクスで探すのはちょっとなあ。アプリ使えば出会いもあるのかもしれないけど……オレ、ロマンチストだからそういうのよりは偶然の出会いに期待したいんだよね〜。だったら、ここよりでかいシュートシティで探すのがいいのかな。でもシュートシティで出会いがあったとしてもちょっと遠距離すぎるかなあ。う〜ん。

ぼんやりと自分の将来を交えた天望について考えを巡らせていると、ふと足に何か触れるものを感じた。顔を上げると、無精な感じのヒゲが似合うイケオジが湯船の中でオレの足を控えめにつつきながら、意味深にこちらに視線を向けていた。
これはかなりアリなタイプですね、運がいい!

「(まあ今すぐパートナー作らなくてもいいっしょ!もっと遊んでいたいし!)」

引っかかった獲物に愛想のいい笑みを浮かべながら、軽薄に思考を放棄した。だってこれは楽しいバカンスなんだから!


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