短編
!TF主
!ディセプティコン兵






なあスパークがぎゅっとなってギリギリしてブレインサーキットが暴発しそうなくらいキュンキュンするんだ。それでもって時たま体中の回路がいかれるんじゃないかと思うくらいギューンとして苦しくなって暴れだしたくなったり叫びたくなったり、ボディの冷却装置が機能不全に陥ってどうにも機体温度が上昇する時があるんだ。なあ、俺は一体どうなっちまったんだろうかリペアが必要なんだろうか頼む教えてくれメディックノックアウト!

そう喚き散らしながらリペアルームに駆け込んできたナマエを見て、ノックアウトはやれやれと肩をすくめた。

「うるさいですよナマエ。塵をまき散らさないでください」

仕事場で自身の指先を研磨していたノックアウトはその手を止めてナマエを見返す。するとナマエは先ほどと全く同じ台詞を吐いてノックアウトに詰め寄った。

「どう考えても何か機体に損傷が生じているとしか思えない!ブレインサーキットがこんなにぎゅうぎゅうギャンギャンするなんて!それになんだかアイセンサーまでおかしくなってきたんだ!」

そう患部をコツコツ叩いて不安げな表情をするナマエにノックアウトは唐突に閃いた。
ハハァン。近頃妙に私に話かけてくると思ったら…そういうことでしたか。

ナマエ、私に惚れましたね?

思えば心当たりはそれなりにある。ナマエはもともと戦闘員で、リペアルームに来ることなんて故障した時ぐらいしかないはずだ。それなのに用もないのに不意にここを訪れて私と他愛もない話をしたがる。ウォーブレークダウンともそれなりに仲が良さそうだが、明らかに私といる時の方がにこにことしていて楽しそうにしている上につい先日はドライブに一緒に行きたいと言われたところだ。断りましたけどね。

「あーナマエ、その症状は今も出ていますね?」

「ああ、今まさにあんたにノイズが走って視える」

そう言ってぱちぱちと瞬くナマエを見てノックアウトは確信した。
今まさに、ナマエは自分に恋をしている。うーん、私も罪な男ですねぇ。

「ナマエ、ここにきていっそう症状が悪くなったんじゃないですか?」

「ああ、なんだかさっきから機体温度が上昇した気がする…暴発しそうだ」

「そうでしょうそうでしょう。それで、私に何か言いたいことありません?」

「ある。出来れば問診は置いといてさっさとリペアして欲しい…」

「そうじゃなくて!…ですね。これは心因性のもので普通のリペアでは治らないんですよ」

「そうなのか!お、俺は死ぬのか…?」

「それは絶対にさせません。というか死に…至る場合もありますがそうはならないでしょうね。で、あなたには最近気になって仕方のないことがあるはずでしょう?」

「うーん、気になってる…ことは別に特には…あー、この間オートボットに海に落とされたのはショックだったかもしれない。その後放置されて暫く海中にいたし。誰も気付いてくれないんだもんなぁ…。ブレークダウンが迎えにきてくれなきゃどうなってたことか」

「あれはわ・た・し・が・気付いて指示したんです!それ以外に!何かあるでしょう!私に言うべきことが!」

「ああ…?あの時はありがとう…?」

「そうですが違います!」

なかなか核心を突かないナマエにノックアウトはイライラと眉パーツを寄せる。
あなたは少し自惚れるということを知った方がいいです全く!それともわざとやってるんですか?お生憎様ですねぇ。私は自分からなんて絶対に言いませんからね!振られたくなかったらこの機会を逃すもんじゃありません。私の気が変わらないうちにさあ!さっさとおっしゃい!

「いい加減私が好きだと言ったらどうなんですか!!」

うっかり口を滑らせたノックアウトの言葉を「好き…?」とうわごとのように繰り返して、ナマエのアイセンサーが赤く発光する。すると次の瞬間短い緊急アラートと共にナマエのブレインが強制シャットダウンした。驚いたノックアウトは慌ててナマエの機体を検査する。

「うわやばい」

コンデンサーが錆び付いたことにより、あらゆる制御装置がコントロール不能に陥ってオーバーヒートを起こしている。
つまり本当にただの故障じゃないですか、これ。やだ…、メモリー消しておきましょ。


- ナノ -