! マルコさんがドMです。
! キャラ崩壊注意
本日も張り切って海賊家業!
ご機嫌麗しゅう。ナマエでございます。
現在私は半壊した部屋の壁の修繕作業の真っ最中であります。なんと申しましても此処は天下の海賊船でございます。老朽化の他にも敵の砲弾やクルー同士の喧嘩などで船が壊れることも少なくはございません。(正直、敵の攻撃よりも喧嘩や酔って誰かが暴れて破損が生じることの方が多いですが)
そこで登場するのが私たち船大工でございます。我々の使命はただひとつ!大切な仲間たちの命を担う船を守ること!こちらに尽きます!……まあその大切な仲間によって船が傷付けられることも少なくないのですが。そちらは置いておきまして。
私も白ひげ海賊団クルーとしては長く、そこそこ大工修行も積んで参りました。今では修繕そのものを全て任されることも増えてきたのでございます。そして!なんと!今私が修繕しているこの壁は!私の憧れの紳士の中の紳士、ビスタ隊長のお部屋のものなのでございます!
私、この仕事を申し付けて下さった師匠(大工修行の)に初めて感謝の念を抱きました。土下座してお礼を申し上げたい気持ちでございます!私の全身全霊をもって破壊される前よりもより一層美しい壁にしてみせると誓います!必ず!
派手に砕け散った壁の破片を拾い上げて集めてある屑の山へ放り投げる。このいっそ清々しいほどの壊れ方はサッチ隊長とエース隊長ですね……。確か酔って些細なことで喧嘩をしたお二人が散々に暴れなさったらしい。辺りには木片の燃えカスなども転がっていて壮絶に暴れたあとが見え隠れする。
大体ビスタ隊長のお部屋は食堂に近すぎるのです。どんなに早くジョズ隊長やイゾウ隊長が止めに入っても被害が出るほどにビスタ隊長のお部屋は食堂に近い。よく食堂で好き嫌いする者を追いかけまわすサッチ隊長や寝惚けて炎を出すエース隊長は大工衆のブラックリストに載っている。それでも毎回繰り返すのは破壊される度にそれを慈悲深くお許しになるビスタ隊長の懐の深さ故なのでございましょうか…。
修繕するべき箇所の木片を払い綺麗に調えてから自腹を切って購入した強度、美しさ共に最高級の木材を宛がう。
やはり良いものを用意して正解でございました。ビスタ隊長のお部屋にはこのような質のものがぴったりでございます。
早速大工道具のケースから釘と金槌を取り出す。釘だって、今度はちょっとやそっとじゃ吹き飛ばされないように打ち込みましょう。ビスタ隊長のお部屋は私がお守りするのです!
「はぁ…俺もナマエに打ち込んで欲しいよい。……ナマエ自身を」
で た 。
「…………マルコ隊長」
「マルコって呼んでくれよいナマエ」
音もなく現れたマルコ隊長にぶるりと怖気がたつ。いつの間に…というか気配を消して背後に立つのはお止めいただきたい。
「……何かご用でしょうか。ご用がないのでしたら早々にお引き取りいただきたいのですが。今すぐに」
「はぁうっ……!相変わらず辛辣だよい……っ!」
うっとりと瞳を恍惚に弛ませるマルコ隊長に舌打ちしたい衝動にかられる。
いけませんね、そんな下品なことビスタ隊長でしたら致しません。私も紳士を目指す者の端くれでございます。
「……ご用がないようですのでマルコ隊長がこちらにいらっしゃるのでしたら下がらせて頂きますが」
作業はしたいですが仕方ありません。私が耐えられそうにございませんので。
私が部屋から出ようとするとマルコ隊長が慌てて表情を引き締めた。出ていく私の腕をつかんで引き留める。
「邪魔しに来たわけじゃねぇんだよい!あのやろ……ナマエの師匠に様子を見てきてくれって頼まれてねい」
「…師匠に?」
確かに師匠は2番隊ですが……。珍しいこともあるものでございます。というよりなんて人に頼んでくれたんだあの野郎。人選もっと考えろや!
私が足を止めるとマルコ隊長はゆっくりと私の腕を離して息をついた。
「そろそろナマエも一人前に近いからってねい。期待されてんだよい」
「師匠……」
そんな意外なことを……。マルコ隊長の言葉を頭の中で繰り返す。
私が……一人前……。紳士としてはまだまだひよっこなこの私が……。
「偉そうなのは果てしなく不本意だがねい。船大工の師匠だからってナマエにベタベタしやがって……ぶっ殺してやりてェよい」
……今の発言は聞かなかったことに致しましょう。全く遺憾なほどに気持ちの悪い……。
「……にしてもおかしいですね……。今まで隊長方の部屋の修理は師匠がなさっておりました。いきなり私に任されて驚いてはいたのですが……。一人前の試験として用いるなら普通、食堂や廊下などが最適でございます。隊長方の部屋など私には身に余りますので……」
それに今までは手をつけさせても頂けませんでしたのに。一体どのような心境の変化なのでございましょう。
ちらりとマルコ隊長を見ると少し照れたように頬を掻いていらっしゃいました。おや?
「あー……、ナマエはビスタに憧れてるんだろい?だからあいつに……ナマエにやらせてくれって頼んだんだよい」
余計なことして悪かったねい、とマルコ隊長が眉を下げて微笑む。
「マルコ隊長……」
その仕草に胸がじんわりと温かくなって心臓が動悸した。
私の為に……してくださったのですか。私がビスタ隊長を尊敬しているから。
「ありがとう、ございます」
それは……凄く……嬉しゅうございます。私はこの方を誤解していたのでございましょうか。照れたようにそっぽを向くマルコ隊長がなんだか少し可愛く見えます。
「いや……俺が勝手に余計なことしたんだよい。だから……」
じゃらりという音がしてマルコ隊長が懐から何かを取り出す。
ん?
妙に重量感のある音に視線を向ける。
「お・仕・置・き……してくれよいぃ……っ!」
マルコ隊長の懐から出てきた長い鎖に思わず唇が弧を描いたまま固まる。頬を一層赤く染めて期待するように上目遣いをするマルコ隊長に爪先から旋毛まで一気に鳥肌が立った。
そうだ、忘れてはいけないのでございました。この方は、マルコ隊長なのでございます。
マルコ隊長は鎖を自分の首に巻き付けて甘い声でしなだれかかってくる。あまりの嫌悪感に血管がぶちギレそうになった。
我慢です……耐えるのです私!紳士たるもの……!!
「ナマエッ……ん。釘プレイでも金槌プレイでも……ぐちゃぐちゃにお仕置きしてくれよいッ……!」
紳士たるもの……。
「酷くッ……ナマエを打ち込んでくれよい……ッ!」
紳士……。…………。
ふ、
気色悪ィんだよこの【規制】野郎!今すぐ消えろ!!
(腹を蹴り飛ばせば恍惚)(一瞬でもときめいたなんて嘘だ!)