アセムの矛盾 | ナノ

第二の啓示


 覚醒剤だ、スピードだ。なんだってキメてトリップしてしまいたい気分だった。こんな陰鬱とした心持ちの時は酒を飲むに限る。
 煌びやかな繁華街を歩いているといかにもな不良に絡まれた。お嬢ちゃん、一緒に遊ぼうよナンテ誘われてもわたしの貞操は誰にも譲らないのだ(宗教を信仰するには処女であることが求められるらしいのでわたしは恋人を作らない)(嘘、単純にモテない)。

「あの、困ります。わたし松毒なんで」
「何言ってんだこいつ」
「梅毒の間違いじゃねーの? いいからおいでよ。お兄さん達暇でさー」
「あとフィラリアです。図書館呼びますよ!」
「いいから」
「テメェら何やってんだよ」

 神だった。

「んだよ、俺らは今この子に用があんの」
「このクソ女は俺様のツレなんでね。死にたくなけりゃ今すぐ土下座しろ」

 そこからは早かった。神はチンピラを殴って蹴って、ちぎっては投げちぎっては投げ、切って裂いて燃やして丸めて(実際は一発殴られた時点で二人とも逃亡している。聖書の事実はおそらくこうして事実を大袈裟に記したものだと理解した)瞬く間に追い払ってしまった。

「ナマエちゃん、何もされてねェな?」
「ユウキさん、いや、ユウキ様! いいえ、ユウキ神!」
「俺様は神じゃねェよ。もっとも、それ以上かもしんねーけどな」
「あの、ユウキさん」
「あ? 礼ならいらねェよ。たまたま通りかかっただけだし」
「いえ、背中」

 ユウキ=テルミ参上! と書かれた頭の悪そうな貼り紙を取ると、ユウキさんは走り去って行った。わたしの神は少し俗っぽかった。でもそれがいい!





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