猫と鴨達の沈黙
永遠が欲しい。この世のありとあらゆるものは無常といって、流れる川のように一瞬一瞬の積み重ねで二度と同じ形は為さないのだ。
「珍しく哲学的ですね」
「2200年のアリストテレスとはわたしのことです」
「鴨長明のようですが」
「鴨? 昨日の鶏のソテー美味しかったですね」
「たまには食べ物と神以外のこと考えてくださいよ」
「たとえば?」
「私のこととか?」
(沈黙)
「ハザマさん今フラれたんですよ」
「誰に? ミョウジなら今も昔も私の恋人ではありませんか」
「あれーそんなことあったっけ」
「でないとこんな馬鹿みたいな会話に付き合いませんよ」
「えーっと、ハザマ、くん?」
「気持ち悪いので今日限りで別れましょう」
「騙されないぞ。ハザマは古今東西森羅万象老若男女わたしの上官だ」
「はいはい、ミョウジは難しい言葉を知っていて偉いですねー。飴あげるんでどこかに行ってください」
「わーい、ハザマさん大好きー」
貰った飴は変な味がした。耳みたいな三角がついている。その日わたしは猫にモテた。ピンクの猫又のお姉さんに話し掛けられて、嬉しくてわたしはちょっと飛んだ。
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