アセムの矛盾 | ナノ

ローマの沈黙


 かぶき者と呼ばれたい。風流よのお、なんて賞賛されるのも悪くないかもしれない。一座を率いて世間を旅するのも人生だと思う。

「ハザマよ、余は疲れたぞ」
「今度は何に影響されたんですか」
「ツバキと時代劇見ました。あと帰りに雅な殿方とすれ違いました。大和魂がくすぐられるで候」
「鬱陶しいですね。しかしあなたの影響されやすさは利用できるかもしれません」

 そういうわけでわたしはローマの休日を見せられている。それからミュージカル(これはイライザ役が美人ということ以外頭に入ってこなかった)。こんなのを見せて洗脳しようというのか。残念だったな、わたしの頭の中はユウキさん信仰でいっぱいだ。

「おい、ハザマ。俺様は疲れたぞ」
「それでこの様ですか」
「テメェが偉そうに俺様に口利いてんじょねェよ。ゴミが」
「(客観視すると結構腹立つな)」
「おいハザマ、飯はまだかよー。鶏肉とあとデザートに果物食べたいです」
「後半戻ってますよ。まったく単純にも程がありますね……どうして私といるのにこんなに生意気なんでしょうか」
「それはハザマさんがこんなだからですよ」
「拾ってきた当時はまだ素直で可愛かったというのに残念ですよ。まあ、統制機構に模範的な大人はいないから仕方ありませんね」
「ロリコン?」
「ボインのねーちゃんが好きです」
「不潔です」

 拾ったとか言っているがわたしは遺失物ではない。そもそも物じゃないし。有体物という点では空気エネルギーその他の追随を許さないが、それ以前に人である。ホモサピエンスだ。そしてホモセクシャル。

「誰がレズビアンや」
「とうとうそこまで頭が悪くなりましたか」
「違います。ちゃんと男性が好きです」
「誰のことが好きなんですか? 私ですか?」

(沈黙)
(二回目なのでもう慣れた)


「ハザマさんまたフラれたんですよ」
「それは残念ですね。私といたら食に不自由しないというのに」
「もう食べ物に釣られるわたしじゃないぞ」
「そうですか。それも残念です。ミョウジのそういう単純なところは好きだったんですがね」

 今日のハザマさんは様子が違った。





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