食事を摂る姿は美しかった。黙っていればこんなにも美青年なのに、神は彼に罵詈雑言を与えた。
「蛇は歌が要らないからミミズと目を交換したそうですよ」
「歌ですか。歌って差し上げましょうか?」
「歌うなら短歌の方がまだマシです」
「素晴らしいと一部では賞賛されているんですがね。残念です」
咀嚼しているのかはわからないが、ハザマさんは美味しくない塊をぺろりと平らげた。今日はノエル主催の食事会だ。お腹が痛い演技を丸三日続けてよかった。
「そういえば、ハザマさんってなんでユウキさんの発音知ってたんですか?」
「それは、テルミさん本人が何度も自己紹……あ」
「お知り合いなんですね!」
「ち、ちがいま」
「どんな方なんですか! 誕生日はいつですか? 祝日にします! それから身長と体重と、趣味と……血液型がわかったら相性占いができますね。きゃー! わたしったら唯一神と! そんな! 忘れてください! 恥ずかしい!」
「あなたも綺麗さっぱり忘れてください、頼みますから……」
灯台下暗しとはこのことだ。さすがは諜報部のハザマ大尉、人脈の広さに感涙してしまう。他には何を聞こう。好きな体位? 好みのタイプ? だめだだめだ、神相手にそんな罰当たりな!
「体調治ったんだね! シチューをどうぞ、まだまだいっぱい残ってるから!」
「ノエル、これは、そうじゃなくて」
「ヴァーミリオン少尉! ミョウジさんは一週間前から何も口に
していませんから、残りをすべてお出ししてください!」
「ハザマさ、あああああ」
そうしてわたしの食事会での記憶は見るも無残に抜け落ちてしまった。