やはり、こんなことすべきでは無かった。ミョウジは、ナマエは最初から私のことなんて眼中にないし、そもそもこんな自分が人から愛されるのはおろか人を愛することさえ間違えだったのだ。失敗だった。
「……。最後に一度失敗してみようかと思っただけです。それでは、異動先ではくれぐれも無礼のないように頑張ってくださいね」
捨て台詞なら得意だった。震えているのはきっと自分だけで、彼女の顔を見ないようにしてノブに手を掛ける。す、と息を吸う音がする程、この部屋は静かだ。
「わたしは探します! ハザマさんのこと、そのためなら何だってするし、死んでも構わないと思います……多分。ハザマさんにそれがわからなくても、その、なんていうか……」
失敗の無い人生だ。
「わたしはハザマさんが好きです。ハザマさんだったらわたしのこと、助けてくれますか?」
「私も貴女と落ちますよ」
落ちてしまった。こんなもの必要ないし意味も無いのに、どうしてかき乱されるのだろうか。
抱き締めた彼女は紫煙のにおいに包まれていて、私は初めて咳払いをした。
← ↓ END