マジカルシャイニング死罪 | ナノ

猫のいない後日談

「すっかり猫も出なくなりましたが、一体誰の差し金だったんですかね?」
「少なくともわたしじゃないので」
「いやだなあ、私がミョウジ少尉を疑うわけがありませんよ」

 付き合ってみたら人格が変わる人がいる。たとえば、優しそうに見えて案外冷たかったり、綺麗好きそうに見えて家は散らかっていたり、ハザマさんはそういう意味では何も変わらないかもしれない。ただ、彼から一言取るとただの良い人になるなというぐらいだ。

「それより、いつになったらそのミョウジ少尉っていうのやめていただけるんですか?」
「貴女が中尉に昇格になったらですかね?」
「そうじゃなくて」
「ハザマ、とかハザマくん、とか呼んでいただけるならすぐにおやめしますよ」

 いいや、大分変わった。ハザマさんはさっきからわたしを捕まえて離さない。身長差のおかげですっぽりと収まっているが、抱きしめたり頭を撫でたりとせわしない彼の挙動が恥ずかしくて仕方ない。

「ハザマさん、ちょっと離してください」
「それより、ミョウジ少尉はいつになったらそのハザマさんっていうのやめていただけるんですかねー?」
「真似しないでくださいよ! ハザマ………さん」
「惜しいですね! 階級や年の差なんて気にしなくてもいいんですよ」
「あー髪が乱れるー」
「私の頭も撫でてくださいよー」
「じゃあまず離してくださいって!」

 はい、と素直に腕が離される。自分で言っただけにやらなければという使命感がのしかかった。恥ずかしい。こうなるから男の人を好きになりたくなかったのに。
 恐る恐る髪を撫でると、ハザマさんは満足そうに笑った(いつもの笑顔をここ最近見分けられるようになっている)。

「ナマエは素直で可愛いですね」
「え、ナマエって?」
「根負けです。そのうち距離を縮めていきますから」

 そう言ってハザマさんは真正面からわたしを抱きしめた。細身だなあ、とか考えながら、わたしは恥ずかしさのあまり死にそうになった。

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