「ナナヤ少尉はミョウジ少尉と同期でしたっけ」
「へ? ナマエですか? 士官学校時代からの友達ですよー」
普段なら挨拶すらしないくせに、給湯室で一緒になったハザマ大尉に話し掛けられて思わず声が裏返った。
「急にどうしたんですか? まさか、ナマエのことで何か……」
「いえ、個人的に気になりましてね」
「ああ、そういうことですか! ナマエのことなら何でも聞いてください! あたし、ナマエマスターなんで!」
「そんなものを極めたいとは思いませんがね」
まったく嫌味な人だ。この人って苦手なんだよなあ。
ソファに腰掛けて、帽子をくるくる回しながらハザマ大尉は成績だとか、趣味だとかを尋ねた。諜報活動というわけでもなさそうなので、自慢の友人をここぞとばかりに紹介する。
「あ! ナマエって無類の猫好きなんですよー! 逆にリスは苦手みたいで、仲良くなるのにちょっと時間かかったんですよね。噛まれるのが怖いとか」
「猫、ですか」
「好きといえば、あの子って色恋沙汰の噂無いなあ。逆に男嫌いなんじゃないかってぐらいガード固くて。せっかく可愛いのにもったいないですよね」
「……わかりました。ナナヤ少尉、私の分もカップ洗っておいてください」
「え? はーい。お疲れ様です」
心なしか、ハザマ大尉は難しそうな顔をしていた気がする。ナマエと何かあったんだろうか。
それにしても人遣い荒いよなあ。二人分のカップを洗って給湯室を後にした。もしかしたら。面白いことが起こる予感がした。