マジカルシャイニング死罪 | ナノ

わたしの回想

「えーっ! ナマエってハザマ大尉のことが好きなの?」
「違うって、好きとかじゃなくて……」

 三人に話したのは二ヶ月ほど前だ。諜報部のハザマ大尉、一度資料を運んでいるのを手伝ってくれたのが初対面だった。

「お嬢さん持ちしましょうか? って言われたらそりゃあかっこいいなって思うでしょ? ね、ノエル?」
「ハザマ大尉ってよく知らないから……」
「あの人はダメ! ぜーったいダメ! いつも何考えてるかわかんないような顔してるし、めちゃくちゃ口悪いんだよ? わたしも何度嫌味を言われたことか……」
「そう? 食事に誘われたけど。忙しくて断っちゃったから後悔してるんだよなあ」

 マコトの言うことをもっと早くに理解しておくべきだった。猫が好きだという情報をどこから仕入れたのか、それ以降頻繁に呼び出されている。回数を重ねるごとに扱いが酷くなっていって、今や顎で使われるようにまでなってしまった。
 変わって行ったのは何もハザマさんだけではない。マコトだけでなく、士官学校時代に浮いた話ひとつ無かったわたしを、あのツバキまでもが面白がっているのだ。

「今日ハザマ大尉にお会いしたけど、ナマエの趣味って特殊ね」
「キサラギ先輩みたいな人なんてキサラギ先輩しかいないからツバキにはわかんないよ」
「じ、ジン兄様はそういうのじゃなくて!」
「ほらほらー、ライバルいないんだから一思いに告白しちゃえってー!」
「だから好きとかじゃないって! ていうかそもそも部署が違うから無理!」
「あんなに呼び出されてるのに?」

 いつまで経ってもわたしはハザマさんのことが気になって仕方ないけれど何もできないでいる、きっとこの硬直状態がつまらないから最近の猫事件が起きているのだろう。
 学生時代、ツバキのためになんとかキサラギ先輩と引き合わせようと目論んでいた記憶が蘇る。ツバキもこんな気持ちだったんだろうか。


「ミョウジ少尉! 手が止まっていますよ」
「辛いならどこか行ってたらいいのに……すみませーん」

 思い出に浸る暇すら与えられず、上司の催促に応えるべく手を早める。今日は嫌なものを見なければいいんだけれど、早速長い髪の毛がガムテープに絡んで動悸がする。

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テーマ「人外ファンタジー」
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