DONT TALK TO ME | ナノ

TWO

 この男のことが嫌いだ。


「また勝手に入ってきてる。来る時は連絡頂戴って言ってんのに」

 部屋の電気は点けずにソファに腰掛けてテーブルに足を投げ出している。砂が上がるのでやめて欲しいと何回話しただろうか。

「あ? 構わねえだろ、ここ俺ン家なんだし」
「わたしの家です! そろそろテルミくんからも家賃貰わなきゃなア」
「オイオイ冗談キツイぜー。ナマエちゃんがこうして生きてられんのも俺様のお陰なのによォ?」
「ごめんごめん。ご飯食べる?」
「いらねえ」

 三年前からわたしはこの男の奴隷である。奴隷と言いつつもわたしはこの男に恋をした経験があって、その恋愛は一応の成就を迎えた。馬鹿馬鹿しい妄言に囚われている。本当はこんな奴のことなんて好きになったことすらないのに。

「疲れた」
「あ?」
「自分の気持ちが分かんなくて」
「気味悪ィな、急に何言い出すんだよ」
「わたしって本当にテルミくんのこと好きなのかな」
「めんどくせー。こっちも疲れてんだから俺に話しかけんな」

 この男のことが嫌いだ。経緯もきっかけも無くて、ひたすら、きっと命を救ってくれたあの場面でさえもわたしは一貫してこの男が嫌いだったのだ。


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