「別にいいじゃねーか。旧ィ仲なんだし」
「ダメに決まってるじゃないですか非常識! そんなんだから昇進できないんですよ!」
「関係ねーだろ! 別にンな事マジで気にしてないっつーの」
「嘘だー。うだつの上がらない上司! 礼節がなってないんですよ」
テルミさんとレリウス大佐は仲が良いらしかった。そんな雰囲気欠片も見せたことが無かったあたり今まで隠していたんだろうけれど、テルミさんはこう、制服のボタンにしても開けっぴろげである。
「突っかかりやがって、テメェこそあまりに貰い手が見つからなくて焦ってんじゃねーの?」
「えっ、あ、それこそ今は関係ありません!」
わたしだって彼氏の一人や二人いなかったわけではないんだ(ただ最後にお付き合いをしたのが学生時代なのはテルミさんにだけは知られたくない。絶対に笑われる)。
テルミさんは高い身長に物を言わせて、大袈裟に見下ろして意地悪く笑う。
「あーあ、立派な彼氏がいたのに可哀想だなぁ、ナマエちゃんはよぉ?」
「彼氏? いませんしいたとしてテルミさんには話しませんけど」
「いただろ。俺」
「は?」
この人は何を言い出すんだ。どう間違ってもわたしとテルミさんなんてただの上司と部下である。仲は良くない方だ、今は。
ついこの間までは夕飯をご一緒したり、二人で残って仕事をしたり結構上手くやってきたらものだった。もしかして二人は恋人同士なんじゃないの、なんて噂されるのも悪い気はしなくて、でも今は仲は良くない方だ。
やっぱりテルミさんは意地の悪い顔で笑っていた。なんとなく苛立って睨み付けると、途端ににこやかな表情になった。それが懐かしくて、少しだけ胸が痛くなった。
「というよりは私ですかね」
「え?」
「なんてな、冗談だよ。深刻そうな顔すんな気色悪ィ」